ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第11話「踊らない会議」



ロドニーの爺さんの声には、自己陶酔の色が透けて見えるぜ。
だが、他の爺ぃ共もロドニーの爺さんの計画に、顔を輝かせていやがる。
まぁ、地図の上で見ただけなら、確かに東西から大軍で挟撃するように見えるしな。
一見、理想的だ。諸々含めて4万余の大兵力。


だが、他の要素が何一つ加味されてねぇ作戦だ。
・・・上手くいくと良いがな。


「大変です!」


その時、一人の若い議員が議場に飛び込んできた。
あれは確か、アリエフの爺さんの取り巻きだった奴だな。
それまで気分良く討伐作戦の概要を語っていたロドニーの爺さんが、不機嫌そうな顔でそいつを見る。


「何じゃ、騒々しい。今重要な話をしておるのじゃ」


大したこと無い地方反乱じゃなかったのかよ、爺さん。


「も、申し訳ありません、ですが・・・」
「何じゃ」


議場に駆け込んできたそいつは、言葉を詰まらせながら、答えた。


「ウェスペルタティア西部で、変事が・・・!」





Side グレーティア

「・・・と、言うような会議が今、元老院で行われているはずよ」


私は目の前の男の子に、優しい口調で語りかけた。
まぁ、話の内容自体は、すでに2日前の段階で決まっていたこと。
アリエフ様の軍事作戦案を、ロドニーの低能が我が物顔で話しているだけよ。


「もちろん、それは貴方も知っていたわよね?」
「・・・」
「そうでしょうねぇ、だって貴方に教えてあげたのは私だもの」


私が彼の目の届く所に書類を放置して、見るように仕向けたのだもの。
彼・・・ミッチェル君はそれを見て、思ったのでしょうね。
知らせなきゃ・・・って。


ああ、なんて美しい友情なのかしら?
私はね、子供同士の友情ほど見ていて胸を打つ物は無いと思うの。
だって、とても純粋で可愛いじゃない?


「ふふ・・・今頃貴方のお友達は、新オスティアに向かっているわよ? 何だったかしら・・・そうそう、ジョニー・ライデインとか言う男の飛行魚トラックに乗ってね」


港が封鎖される前に出立できるように情報を操作した。
今頃は、トリスタンあたりにいるんじゃないかしら?


「何で・・・」
「何故? 良いわ、教えてあげる。私はねぇ・・・!」


意外と鍛え上げられているミッチェル君の剥き出しの背中をヒールで踏みつけながら、私は言った。
私は、純粋な物が大嫌い。
純粋であることを、当然みたいな顔をしている子供が大嫌い。


壊してやりたいくらい。
ううん、壊れれば良いのよ。


「私はね、メガロメセンブリアが嫌いなの。あの男・・・アリエフが作ったこの国が憎いの。私が誰かもわからないような男に権力を与えるこの街を、滅ぼしてやりたいの」
「・・・?」
「わからない? 良いのよわからなくて、貴方はそうやって閉じこもっていれば良いの・・・惨めに地べたに這い回ってね!」


顔を蹴り、鞭を打つ。
ピシィッ、パシッ、と言う鋭い音が、部屋に響く。

[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/13

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析