ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第12話「国家には往々にして良くあること」

Side アリア

朝6時と言うその時間は、人によって起きているか寝ているか、微妙な時間です。
2回目の御前会議が開かれたのは、そのような時間帯でした。


「皆様、おはようございます」


朝の挨拶を済ませた後、宰相代理であるクルトおじ様が状況の説明を始めます。
曰く、大公国・・・叛乱軍が進撃を始めたと言うのです。
しかも、途中の街道上の民衆を踏みつぶしながらの進軍とか。
はて、ネギにしてはらしくない行動ですが・・・。


「それはつまり、連合がオスティアに向けて進軍を始めたと言うことか」
「いいえ、そうではありません」


会議の場で上がった当然の意見を、しかしクルトおじ様は否定しました。
私はすでに報告を受けているので知っていますが、参加者は意外そうな顔をしています。
中には、驚きよりも納得の色が濃い方もいるようですが。


「西方諸侯の内、反乱に加担せず事態を静観していたアラゴカストロ侯爵領に、公国軍は攻撃を加えたのです。どうやら話し合いでは無く、武力による統合を決断したようですね」
「何と・・・!」


ウェスペルタティア西方の16家の貴族の内、15家はネギに味方しています。
しかし唯一、アラゴカストロ家だけが旗色を表明しておりませんでした。
王国西方のほぼ中央部に位置するアラゴカストロ領が味方で無いと言うのは、ネギ側からすれば鬱陶しいことこの上ないでしょう。


特にここ数日は、我が王国と反乱勢力との境界を越えてくる難民や民衆が多くなっていました。
ただ距離的に王国支配地域に来れない人々は、アラゴカストロ領に流れ込んでいたのです。
そうした人々が、同領内への侵攻を企図する公国軍にとっては邪魔だったと言うこと。


「ただ、叛乱軍の脱走者や国境で事の次第を知らせてきた民間人によると、どうも敵首脳部や連合の意思ではなく、現地司令官による独断であるとの報告が上がってきております」
「問題は相手の意図では無い。無辜の民衆が犠牲になっていると言うのであれば、総力を挙げてこれを救援すべきだろう」


そう語気を強めたのは、銀目碧髪で眼鏡をかけた財務官僚、ニッタン助教授。
ニッタン助教授は、教育者らしく人道主義的な意見を述べました。
つまりは、こうです。
民衆を救え、そのためにこそ我らは起ったのではないか・・・と。


「そんなことは不可能だ。我らにはそれだけの力は、無い」
「軍の編成も補給の準備もまだ途上で、とても敵の勢力範囲内に長駆して数万の民衆を救出する余裕は無い。気持ちとしては同意するが、部下に無駄死にを命じることはできない」


一方で、グリアソン、リュケスティス両中将が反対しました。
確かにここで数万の難民を見捨てるのは心苦しい、だがここで動けば国防体制そのものが瓦解する。
そうなれば、王国数千万の民全てを守ることができなくなる。
それでは本末転倒ではないか・・・と言うのが彼らの意見。


どちらの意見にも、一理あります。
そして現実的に見れば、どちらの意見を取るべきなのかは自明です。
ただ・・・。


「では、彼らを見殺しにすると言うのか!」
「そうは言わん、だがどの道救援は不可能だ。ならばより多くの民を守る道を模索すべきだろう」

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