第12話「国家には往々にして良くあること」
「貴様ら軍部はそう言って、18年前の処刑もただ見ていただけだったではないか」
「前回と今回とでは事情が異なる。いずれにせよ、安易な人道主義に陥って大局を見誤るべきでは無い」
「何を・・・!」
ヒートアップしていくニッタン助教授とリュケスティス中将の口論を聞きながら、私はゆっくりと目を閉じました。
そう、現実としてできることは決まっています。
ただ、感情が邪魔をする。
Side アリエフ
「バカ者がっ!!」
その報告が午前の執務時間にもたらされた際、私はそう叫んだ。
と言うより、それ以外に言いようが無かった。
「そのような重要な報告を、何故今頃持ってきたのか!?」
「は・・・その、まだお休みのご様子でしたので・・・」
「起こしてでも、伝えんか!!」
「も、申し訳ありません!」
公国軍(西方貴族連合軍)が小癪なアラゴカストロ侯爵の領内に侵攻したと言う報告自体は、別に気にすることは無い。
むしろ、それを利用して勢力を拡大する策もあった。
だが、進軍の際に難民を虐殺しながら進むとは・・・何たることか!?
これでは、公国を支持する連合の立場が無いではないか。
いや、私の立場が無い。
「公王はそれに許可を与えたのか!?」
「は・・・それがその・・・」
「何だ!?」
「・・・公王陛下は魔法球にお籠りになられ、修業中とのことで・・・」
公王・・・つまりはネギ君の許可が無ければ、原則として公国軍は動けないことになっている。
だが、何らかの事情で公王の指示を仰げなければ、現地司令官の判断で動いていいことになっている。
緊急の事態には、そうでなければ対応できないからだ。
別に王としての器量を求めたつもりは無いが、丸投げとはな。
つまり公国軍の現地司令官は、公王からの指示が無いので、現地の判断で動いたと言うことになる。
現地司令官・・・つまりは西方貴族連合の盟主、プロスタテンプステトメア侯爵。
・・・元より、西方における自らの覇権確立を目指してのことであろうが。
「・・・本来なら、司令官を処断して場を収めるのだが・・・」
それをした場合、私は西方での基盤を失うことになる。
武力と権力を持つ貴族連合と、何の力も無い民衆。
権力とは、集中すればするほど、小さな部分を押さえることで全体を支配できる。
歴史上、民衆によって倒された権力者は多く存在する。
そしてそれ以上に、権力者によって弾圧された民衆の例は多い。
今回の件は、その一例にすべきか・・・?
仕方無い、処理を始めよう。
「・・・それはそれとして、帝国の件はどうなっている?」
「は、ご命令通り遂行しております」
「うむ・・・」
あの策が功を奏すれば、帝国は動けなくなるだろう。
まぁ、永遠に動けなくなる必要は無い。
ほんの1カ月で良いのだ、それだけあればウェスペルタティアを手中にできる・・・。
だが、そのためには内部を固めなければな。
「・・・宰相はどうしている?」
「は、執務をしておられますが・・・」
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