ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第16話「決戦前夜・前編」

Side リィ・ニェ(ヘラス帝国女性将校)

「我々は孤立してはいない、必ずや帝国の同胞は我らに同調するであろう」


そう言い続けることでしか、私は部下達の動揺を抑えることができなくなっていた。
もはや、我々が支配している―――支配と言えるかすらも疑わしいが―――場所は、帝都ヘラスのごく一部でしかない。
他の地方叛乱は、全て制圧された。


帝都守護聖獣も敵の味方こそしていないが、我らの味方でも無い。
元々、完全な味方でも無かったが・・・。


「・・・皇女殿下らは、どうなされておられるか?」
「皇帝陛下崩御の後、自室に籠られたままです」
「そうか・・・」


皇帝陛下崩御、コレも我々にとっては誤算だった。
陛下の傍の奸臣を討つ。
そう宣伝してクーデターを起こした直後、陛下が崩御された。
自決とも、暗殺とも聞いているが・・・真相はわからない。


外部では、テオドラ殿下が帝位を宣言されたと言う。
めでたい事だが、殿下に陛下の死が伝わるのが早過ぎる。
・・・胸の内に、言いようもない不安がよぎるのを感じる。
私は頭を振ってその不安を追い払うと、廊下を歩くスピードを速めた。


「・・・皇女殿下らに拝謁する。案内せよ」
「はっ」


護衛兵にそう言って、皇女殿下がおられる部屋に向かう。
第一皇女殿下と、第二皇女殿下。
現在、テオドラ殿下以外に皇位継承権を持っているのは、このお2人以外にいない。


ヘラス族の平均年齢で考えれば、皇帝陛下はあと100年はご健在であられたはずだからな。
まだしばらく、皇位継承問題は顕在化しないはずだった・・・。


「リィ・ニェ准将である。殿下への取り次ぎを願いたい」


数分後、宮内省の役人にそう告げると、思ったよりもすんなりと承諾の返事を貰えた。
これまでは、拒否されていたのだが。
まぁ、お会いくださると言うのならば、是非も無い。
そう思い、護衛兵を待たせ、長い廊下を歩き・・・。


「失礼致しま・・・」


皇女殿下の私室―――第一皇女殿下のだ―――の扉を開き、その場で跪こうとした私は、動きを止めた。
皇女殿下は、お2人共おられた、それは良い。
だが椅子に縛りつけられており、しかも目に生気がなかった。
明らかに、様子がおかしい。
そう思って視線を動かせば、殿下の足元に4本の注射器のような物が・・・。


―――――薬物か!?


「殿・・・ガッ!?」


即座に反応し、お傍へ・・・と思った瞬間、首の後ろに衝撃が走った。
意識が瞬間的に途切れ、視界が回転し、頬と身体に痛み。
気が付いた時にはうつ伏せに床に倒れ、しかも背中を何者かに踏まれて身動きがとれなかった。
ゴトッ・・・と、燭台のような物が私の顔の横に落ちてきた。


「存外、あんたも役に立たなかったな」
「そ、の・・・声」


脳裏に浮かんだのは、連合から帰還し、クーデター計画を持ち込んだ参謀。
父の、部下の・・・。
その時、首筋にかすかな痛みを感じ・・・数秒後には、目の前が真っ白になる程の衝動が私を襲った。

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