第22話「完全なる世界 Side 現実」
Side クレイグ
『クレイグッ、大丈夫!?』
「大丈夫じゃねぇ、大ピンチだ!」
アイシャからの念話に、そう返す。
大岩やら吹き矢やら落とし穴から逃げたりしている内に、パーティーを2つに分散されちまった。
向こうにいんのは、アイシャ、リン、パイオ・ツゥの3人。
「綺麗に男女で別れたねー」
「ああ、そうだなって、パイオ・ツゥは男だろ?」
「はぁ? 何言ってんだ、女だよあいつ」
「「嘘ぉ!?」」
俺とクリスに衝撃が走る・・・とかやってたら、物理的に衝撃が走りそうになった!
バチィッ、と何かが弾けるような音がしたかと思うと、すぐ側の床が砕ける。
慌てて散開――――通路が狭くて、動きにくいけどよ――――して、足を止めずに後ろを振り返る。
さっきから、通路を全力疾走中だぜ。
バチッ、バチッ・・・バチチチチィッ!
何かが弾けるような音と、火花。
そこにいるのは、見たこともねぇくらいの美女だ。
だけど身体は肉でできてねぇ、雷でできてやがる。
あの姿も、俺らに合わせて作ってる仮初のもんだろうな。
アレは・・・。
「雷の最上位精霊とか、ありえねぇ・・・!」
とてもじゃねーが、10万ドラクマじゃ足りねぇ。
追加料金を要求するぜ、じーさん。
「アイシャ、リンッ、絶対にこっちに来んじゃねぇぞ! 死ぬぞ!」
『バカ言わないで! 今すぐにそっち行くから!』
「バカはてめぇだ! いいか、こっちは今ヤバ」
パリッ・・・と音を立てて、俺の前に雷の最上位精霊が現れる。
念話の途中、しかも俺は目を離してなかった。
だが、気付けなかった・・・!
「・・・はぁっ!」
精霊の背後から、クリスが二本の短剣で斬りかかる。
パシッ、と音を立てて精霊がまた消えて・・・瞬きの間にクリスの背後に現れた。
速ぇ、とてもじゃねぇが知覚できねぇ!
精霊の手が、クリスに伸びて・・・。
「させるかよぉっ!」
「ぶっ!?」
クリスの頭を押さえて(悪い!)身体を下に沈めさせて、俺自身は片手で剣を振る。
パシッ・・・って、またかよ!
「ぬりゃあっ!」
ザイツェフの旦那の拳が、壁に突き刺さる―――さっきまでそこにいた精霊は、やっぱり一瞬で移動しやがった―――、続いてモルボルグランの旦那が、バンッと上半身の服を破って、服の下に隠していた残りの4本の腕を露出させる。
魔族本来の姿に戻ったってわけだな。
「今こそ、俺の変身を見せる時か・・・!」
「ガハハハ、久しぶりにこの俺が本気を出せる相手が出やがったな!」
「僕はもう、魔界に帰りたいよ・・・曾爺ちゃんに会いたい」
リゾの旦那まで加わって、雷の最上位精霊に戦いを挑む。
けどやっぱ、一撃も通らない。
「よし! 僕らも行こうクレイグ!」
「前向きだなお前・・・!」
だが、逃げてばっかじゃ状況が好転しねぇのは確かだな。
俺の言うことを無視して来るだろうアイシャ達が来る前に、片付けなければならない。
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