第3部第2話「爆弾」
Side 茶々丸
本日は、いつもとは異なるスケジュールになっております。
クルト宰相にお願いして、いつもよりも30分、アリア先生の起床時間を遅らせます。
元々、そこまで早く起きる必要は無いですし・・・。
それでも、朝の6時ですが。
「少し、寝坊してしまいましたか・・・?」
「いえ、まだ十分に間に合う時間です、アリアさん」
と言うよりも、いつもが早すぎるのです。
もう30分は眠られても、問題は無いはずなのですが・・・。
今日は、外国からのお客様を多くお迎えする大事な日なのです。
午後からはヘラス帝国やアリアドネーなどの大国の首脳がお見えになりますし、午前中には「イヴィオン」加盟国の首脳や旧連合加盟都市の首脳とも会わねばなりません。
明日には魔法世界諸国の拡大会合がありますし・・・。
外交的に、非常に重要だと言うのは理解できます。
「ユリアさん、ここを押さえておいてください」
「はい」
侍女仲間のユリアさんと共に、アリアさんの着替えを手伝います。
傍にはもっと多くの女官が控えておりますが、基本的には私が、そしてユリアさんが私のお手伝いをしてくれます。
水の精霊の血を引くユリアさんの存在が、部屋の空気を清廉な物にしてくれるからです。
アリアさんは公務の際には、基本的に薄桃色のドレスを着用されます。
今日も明るい内は同色の、しかしいつもとはデザインの異なるドレスで過ごされる予定です。
夜には各国首脳を歓待する夕食会が催されますが、その際には別のドレスを・・・。
「わぁ・・・女王陛下の婚約指輪、いつ見ても素敵ですね」
「え・・・そうですか?」
「はい」
着替えの最中、アリアさんとユリアさんがそんな会話を交わします。
・・・?
その際、何故かアリアさんの心音が少し乱れたように感じました。
アリアさんはそれを表には出しませんし、実際、何も言いませんが・・・。
ユリアさんも、少し不思議そうな表情を浮かべているようです。
「・・・はい、終わりです」
「ありがとうございます、茶々丸さん」
最後に腰の部分でリボンを結んで、大きな蝶のように形を整えます。
普段の薄桃色のドレスよりも、少しフリルとリボンを多くしたデザイン。
16歳という年齢を考え、かつ女王としての威厳を損なわない程度にデザインされています。
アリアさんは、ふわりと微笑んで、いつのようにお礼を言ってくださいます。
それは、とても喜ばしいことなのですが。
「・・・失礼致します」
「はい・・・って、わ?」
コツン、と額をくっつけて、アリアさんの体調をチェックします。
・・・肉体的な障害は見受けられません。
体温、36度2分・・・平熱です。
その他、女性特有の生理現象も許容範囲・・・。
「・・・問題は、ありませんね」
「もちろんですよ、茶々丸さん。それに本当に辛い時は、ちゃんと言います」
「・・・・・・・・・・・・わかりました」
「間を開けるの、やめてください・・・」
そう言って苦笑するアリアさんの顔を、私はじっと見つめています。
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