ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第3話「100キロ箒レース、そして」

「何か言いましたか、ビー?」
「いえ、何も」


まったく・・・とにかく、生ナギに会うのは私!
本物のナギ様の死亡説がニュースで流れた際、ショックのあまりお倒れになったお母様のためにも!
・・・まぁ、今でもお元気ですけど。倒れた理由は風邪でしたし。


「では、栄えあるオスティア記念式典警備隊選抜試験を始めまーす! ではまず志願者の紹介からー」
「む、始まるようですね」
「はい」
「まずは3-C委員長エミリィ・セブンシープ! 同じく書記ベアトリクス・モンロー!」
「「「委員長、頑張ってー!」」」


クラスの声援に応えながら、私とビーはスタート位置につきました。
その後も、他の参加者の名前が呼ばれていきます。
まぁ、それほど多くはありませんが・・・。


3-FのJ・フォン・カッツェとS・デュ・シャ。
3ーGのマリー・ド・ノワールとルイーズ・ド・ブラン。
3-Jのメアリー・クロイスとアンナ・ヴァンアイク・・・。
顔ぶれを改めて見渡して、ふと気付いた。
・・・あら、結局あの人達は来ないの・・・。


「ではー・・・あ? あっと、最後に3-Cのコレット・ファランドールと、サヨ・アイサカ!」


申し込み締め切りギリギリで会場に駆け込んできたのは、先日衝突した2人。
留学生のサヨさんと、成績最下位の落ちこぼれ、コレットさん。


2人とも、特にコレットさんの方ですが、特訓でもしてきたのか、随分とボロボロです。
ふふん、今さらどんな努力をしようと、落ちこぼれは落ちこぼれです。
たかが数日で実力差が埋まるわけでも無し。
結果は、変わりません。


貴女達は、この栄えある任務に相応しくありませんわ。


「良かったですね、お嬢様」
「はぁ? 何がですの?」
「・・・いえ、何も」
「・・・? おかしなビーですね」


ビーは、いつも無表情で、常に冷静なのですが。
たまに妙なことを言うのですが、何なのでしょうね?
・・・まぁ、今はそんなことよりも。


「では、各選手、位置についてぇ!」
「ビー、後衛は任せますわよ」
「はい、お嬢様」
「スタートォッ!」


ドンッ!
箒に魔力を込めて、一気に飛び出す!


勝負です!





Side コレット

む、むむむー、始まった~・・・!
青い箒に乗ったサヨのすぐ後ろを飛びながら、私は緊張で渇いた唇を舐めて湿らせた。


「さ、サヨッ、大丈夫!?」
「はい、大丈夫です。コレットさんは?」
「ち、ちょっとダメかもだけど、けど、頑張るよ!」
「はい!」


サヨと声を掛け合いながら、少しずつ加速する。
今の順位は3位・・・てっきりビリだと思ったけど、でも3位!
それにしても、サヨは緊張とかしないのかな・・・。


「エヴァさん・・・エヴァンジェリン先生の修ぎょ・・・授業よりマシです!」
「エヴァにゃん先生の・・・」


目を閉じて思い出すのは、『魔法の射手(サギタ・マギカ)』の雨の中を潜り抜けたあの日。

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