ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第4話「オスティア難民」

Side ジョリィ

オストラ伯爵領は旧ウェスペルタティア王国建国時、当時の有力な地方官が爵位と領地を賜ったことで誕生した歴史を持つ。
その範囲は広大で、最盛期には王国東部の大半を領地として保有していた。
現在はいくつかの分家に分裂し、東部の一部を構成する貴族領に過ぎなくなっているが・・・。


しかしそれでもなおオストラ伯爵家の影響力は大きな物があり、幾人もの宰相を輩出した名家である。
王都オスティア崩落時、オストラ伯は領地内に50万人もの難民を受け入れた。
これは、オストラ伯爵領が王都東方の比較的近い位置に存在したこと、また領主であるクリストフ様が積極的に受け入れを表明したことが大きな要因であっただろう。
伯爵の20年に及ぶ支援により、50万人の難民のうち半数は自立することに成功している。
だが・・・。


ここには、未だに20万人以上の難民が存在している―――――。


「・・・ようこそ、おいでくだされた・・・」


伯爵は城(伯爵の居城、ノイエ・ファランベルク城)の応接室で、王女殿下をお迎えされた。
顔色は悪く、本来であれば横になっているべき体調であることが、一目でわかる。


「本来であれば、こちらからお伺いすべきであるのに、ご足労いただき・・・」
「・・・」
「・・・強引な手段になってしまったことを、まずお詫びしたい」


王女殿下は、伯爵の言葉に特に答えることもなく、その透けるように美しい白髪を靡かせて、すすめられたソファに腰掛けられた。
宝石のような瞳を物憂げに細めて、初めて出会うであろう旧ウェスペルタティアの重鎮の姿を見つめておられる。


「殿下のお母君には、大変多くの恩寵を賜り・・・」
「前置きは良いです」


初めて、王女殿下が発言された。
前髪の長さが気になっておられるのか、指先に巻き付けるなどしておられた。
本来であれば、その仕草は不快な印象を相手に与えかねない物であったが、少なくとも私の目には、優美にこそ見え、不快な気分などにはなろうはずもなかった。


アリカ陛下の血を色濃く受け継ぐご息女、ウェスペルタティアの王女殿下の行動に、不満の持ちようなどあるだろうか!


「私の母が貴方とどんな友誼を結んでいようと、それは私の関与する所ではありません。用件だけ聞きましょう」


王女殿下の言葉は、簡潔な物だった。
それに対して、伯爵は目を細めて王女殿下を見つめた。
何かを考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「・・・王女殿下には、ご自身の正当なる権利を回復していただきたいと・・・」


正当なる権利。
旧ウェスペルタティアの・・・統治権!
すなわち、王女殿下がその身に相応しい権力と義務をお持ちになること。


アリカ様、あるいはアリカ様の血族がウェスペルタティアに戻られること。
それは、我々オスティア難民の多くが願い、望み、縋っていること。


「つまり?」


王女殿下は、おそらくは伯爵の考えをすでに洞察しておられるのだろう。
表情をわずかに変え、伯爵を見つめた。


「・・・我が領地を殿下にお返しする故・・・その上で、我が民と難民の未来を守ってもらいたい」

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