第5話「王女殿下万歳」
Side アリア
「私は、アリア・アナスタシア・エンテオフュシアです」
そう宣言した際の私の心情を、何と表現すれば良いのでしょう?
展開に流されるままに、迫られるままに行動を選択する私の気持ちを。
ああ、身勝手だな。そう思い、自分自身に嫌悪感を抱くこともあります。
ですが逆に、そうした行動で落ち着く自分もいることに気付きます。
『後悔する日が来るヨ』
超さんの最後の言葉が、耳をついて離れない。
アレは、はたしてどんな意味の言葉なのか。
何に対する後悔なのか、私にはわからないのですから。
・・・ここで、スプリングフィールドを名乗ることはできませんでした。
連合の英雄(最近は犯罪者の可能性が高いですが)の血族であることを示しても、意味が無い場面。
「え・・・エンテオフュシアだって!?」
「エンテオフュシア・・・」
「・・・ウェスペルタティア王家・・・!」
メガロメセンブリア兵達が、動揺したようにザワつきました。
ここで私は、母親の血族であることを示す必要がありました。
そうでなければ、この虐殺は止まらないから。
ウィル君を、そして彼の家を、お母さんを守れないから・・・たとえそれが、遺骸に過ぎないとしても。
この不快な状況が、終了してくれないから。
「そ、そんなはずは無い!」
元老院議員の息子の士官とやらが、顔を真っ赤にして怒鳴りました。
私はそれを半ば無視しつつ、『千の魔法』のページをめくって。
「ウェスペルタティアの王族は、残らず死んだはずだ! お前がそんな・・・」
「『千の魔法』№16、『消火弾(エクスト・ボール)』」
カッ・・・ページが輝き、私の魔力を直接吸い上げて、魔法が発動。
消火用の大きな水の塊が出現し、バシャアッと音を立てて、私達の傍の家・・・ウィル君の家の炎を消すことに成功します。
他の場所は、難民なりジョリィさんなりがどうにかするでしょう。
「そ、そうだ・・・お前がウェスペルタティアの者だと言う証明はできるのか!?」
・・・なかなか痛い所をついてきますね。
私はこれまで、王家とは何の関係も無く生きて来ましたから。
しきたりとか、あと色々・・・何も知らないのです。
何も・・・いえ。
一つだけ、知っていることがありましたね。
「ウェスペルタティア王家の血に連なる者の証拠として・・・」
「し、証拠として?」
「・・・私は、『魔法無効化(マジックキャンセル)能力』を保有しています」
「な!?」
はい、嘘です。ですが・・・。
この人は、私の魔眼のことを知りません。
ならば、私の魔眼による魔法の無効化を、王家の魔力による無効化と混同させることも可能でしょう。
ウェスペルタティアの血族(全員かは、わかりませんが)に特別な力が宿るのは、良く知られる所・・・彼が本当に、自分で言う程上層部に近いと言うのであれば、なおさら。
先ほど、兵士の放った火属性の魔法を無効化してみせたことですし、説得力はあるでしょう。
・・・明日菜さんと比べられると、どうしようもありませんけどね。
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