第6話「小娘と王女」
この艦は新オスティアの地下秘密ドックで数年かけて作った戦艦で、これが処女航海です。
建造計画その物は、アリカ様の時代からありましたが・・・。
将来のアリア様の座乗艦にして、新生ウェスペルタティア王国艦隊総旗艦、『ブリュンヒルデ』。
今は中にいてわかりませんが、白亜の抗魔装甲に包まれた外観のこの艦こそ、アリア様の御座に相応しい。
流線型で繊細なこの戦艦は、戦艦としては小さい方に入りますが、その分防御力と機動力が高く・・・ぶっちゃけてしまえば、逃げ足は世界一。
しかし帝国のインペリアルシップや連合のスヴァンフヴィードにも負けない戦艦です。
ふ・・・しかしあのような鯨船共とは格が違います。
「ふ・・・ふふふ、ふ、はーっはっはっはっはっ!」
「艦長・・・総督、どうしたんスかね?」
「さぁな、我々は自分の仕事をするだけだ」
艦橋のクルー達が奇異の目を私に向けているような気がしますが、まったく気になりません。
しかし私のイメージを守るためにも、ここはクールに行きましょう。
久しぶりにアリア様にお会いして癒しを得られるので、感情が高ぶっているようです。
「総督、オスフェリア上空に入りました。城から接舷許可が出ておりますが」
「即座に接舷なさい。華麗に、美しく、しかも整然と」
腰に手を当て、片手でビシィッ、と指差しながら指示を出すと、何故か艦長が首を左右に振りました。
ウェスペルタティア人でなければクビにしている所です。
あ、ちなみにこの艦には艦長を含めて乗員は全て女性です。
だってアリア様の艦ですよ? 男など必要性ゼロでしょう。
そうこうする内に入港し、私は数名の部下を連れて艦を降りました。
城の頂上に艦を寄せる形で接舷しているのですが・・・城の規模のせいか、あまり美しくありませんね。
はみ出している感が何とも・・・。
「お疲れ様です、クルトおじ様」
「おお、お久しぶりですアリアさ・・・ま」
透けるような白い髪、それに勝るとも劣らぬ陶磁器のような白い肌。左右で色の異なる瞳は宝石のように美しく、そして細く小さく、触れれば折れてしまうのでは無いかとすら思える発育途上の肢体。
極めつけは、純白のワンピースドレス。首に巻かれたチョーカーには、ちょこんと苺の形をした宝石。
・・・・・・可憐だ!
何よりアリカ様の面影を強く残すそのお顔で、戸惑ったような表情で私を見るのはやめてください!
貴女は私をどうしたいのですか!?
「ウェスペルタティア王国万歳!!」
「王女殿下万歳!!」
「アリア王女殿下万歳!!」
私が感動に打ち震えつつもアリア様を『ブリュンヒルデ』に案内していると、城下の民衆がアリア様を称える声を上げておりました。
無論、全ての民衆がアリア様を支持しているわけでも無いでしょうが・・・。
まぁ、政治などと言うものは、50%も支持されれば十分です。
しかし、万感の想いを込めて、私も言っておきたいのです。
私はまだ表向きは連合の総督。なので口には出せませんが・・・。
近い将来、拳を振り上げ、民衆を鼓舞することになるでしょう。
アリア女王陛下万歳、と・・・!
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