ハーメルン
魔法世界興国物語~白き髪のアリア~
第7話「王家の儀式」

Side アリア

「王家の儀式?」
「さようです、アリア様」


何がそんなに嬉しいのかは知りませんが、クルトおじ様はニコニコとその「王家の儀式」とやらについて、私に説明を始めました。


ここは、新オスティア駐留警備艦隊総旗艦『ブリュンヒルデ』の中に用意された私の私室です。
執務室や会議室を使わないのは、クルトおじ様の話が王室限定の話であることもありますが・・・。
何よりも、エヴァさん達の存在があるのでは無いかと思います。
つまり、その、こう言う言い方は嫌いですが・・・この艦内における肩書きが、その・・・無いので。
私的空間であるこの部屋でなければ、話ができないのでしょう。


スクナさんやさよさんは新オスティアに先に行っていますし。
ウィル君はアレテさん達と一緒に、オストラに残っています。


「王家の儀式と言うのは、もちろん私にも具体的な内容はわかりかねますが・・・廃都オスティアの神殿内に赴き、その最奥にて祈りを捧げる・・・と、伝え聞いております」
「はん、半端な知識だな」
「神殿内に入れるのは王家の血を引く者のみなので、アリア様だけが奥に進めます。まぁ、昔から王に地位を約束するのは民か神と申しますので、神様でもいるのかもしれませんね」


・・・今、クルトおじ様は意図的にエヴァさんを無視しました。
エヴァさんがかなりの殺気を込めてクルトおじ様を見ていますが、おじ様は素知らぬ顔です。


「それはそれとして、薫り高き銘茶と名高いオスティアンティーなどいかがですか? アリア様」
「本日のお茶は、旧世界より持ち込んだフォートナム・アンド・メイソンのダージリンです」
「・・・あ、ありがとうございます、茶々丸さん」


茶々丸さんが部屋に備え付けられているティーセットに紅茶を入れて、私とエヴァさんの手元にカップを置いてくれました。
カップが無いのは、飲めない田中さんとチャチャゼロさん、晴明さん(睡眠中)、そしてクルトおじ様。
・・・こ、これは、茶々丸さんのカウンターなのでしょうか。
エヴァさんが何故か満足そうです。


こ、これは・・・自惚れでなければ、私の扱いを巡って対立していると考えて良いのでしょうか。


「でも・・・クルトおじ様、私は今一つ王女に向いていないと言うか、何と言うか・・・」
「いえいえ、そんなことはありませんよアリア様。アリア様は十分に王女としての役目を果たしておりますよ・・・国家の核、と言う役割をね」
「・・・それはお飾り、と言う意味ですか?」
「お飾りになるかは、アリア様の努力次第でしょう。無論このクルトを始め王国臣民全て、アリア様のために粉骨砕身、誠心誠意お仕えさせて頂きます」


ははは、と素敵な笑顔を浮かべて両手を広げるクルトおじ様。
その視線が、つい・・・と、私の隣に座るエヴァさんに向けられます。


「まぁ・・・アリア様のためにならない人材と言うのも、存在しますがね」
「・・・その点に関してだけは、同感してやる」


エヴァさんとクルトおじ様が、この部屋に来て初めて視線を交わし合いました。
しかしそれは、とても友好関係とは言えないような物でした。
・・・これ、もしかしなくても私が何とかしなければならないのでしょうか。

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