果てのその先には
青春とは嘘であり、悪である。
「どうしてそんな事を考えてるんだろうね。もっと単純でいいと思うんだ」
「そうもいかんだろ。単純な人間は単純に流されていくだけだ」
「…よくわかんないんだけど」
青春をおう歌せし者達は常に自己と周囲を欺き
自らを取り巻く環境のすべてを肯定的にとらえる。
「そもそも良い青春時代を送れなかった八幡が悪いんじゃない?」
「違う。社会が悪い。学校生活なんて閉鎖された社会は悪でしかない。村八分って怖いだろ?それとかわらん状況が意図的に作られてるんだぞ?」
「…八幡ってほんとにぼっちだったんだね」
彼らは青春の2文字の前ならば
どんな一般的な解釈も社会通念もねじ曲げてみせる。
「でもさー、それならその社会通念をねじ曲げてやればよかったんじゃないの?そう出来てたら良い青春送れたかもよ?」
「ばっか、それが出来るのは持つものだけだ。社長には出来ることが社員には出来ないんだよ。そもそも窓際だしな」
「なんか話がでかくなってきた」
彼らにかかれば嘘も秘密も罪科も失敗さえも
青春のスパイスでしかないのだ。
「ふふ。そうやって考えると八幡って失敗のスパイスしか入ってない青春だよね」
「ああ。あれだ、テレビでよく見る完食できた人間がいないとか言う、激辛料理と一緒だろ。真っ赤なんだよな。あれ、辛さで涙出てきた」
「よしよし」
仮に失敗することが青春の証しであるのなら
友達作りに失敗した人間も
また 青春のど真ん中でなければおかしいではないか。
「だねー。それなら八幡も青春のど真ん中だよねー」
「だな。まぁ恐らく琵琶湖のど真ん中で、周りに誰もいないがな」
「心は広そうかも」
しかし彼らはそれを認めないだろう。
すべては彼らのご都合主義でしかない。
「ご都合主義ならそれで良いじゃん。八幡だってご都合主義でしょ?」
「確かに。学生の頃は突然出会った女の子が、俺と結婚して専業主夫にしてくれるって思ってた」
「それ高校の話?だとしたら相当ヤバイよ?」
結論を言おう。
「俺はそんな青春を送ってきたが、今ではそれで良かったと思ってる」
「それはどうしてかなー?」
言わせんな恥ずかしい。
そんなこんなで飛行機の中。
「少しは落ち着いた?」
「あ、ああ」
言った八幡はコーヒーを飲もうとして、手に持ったコップはカタカタと揺れてた。
「…全然駄目じゃん。緊張しすぎだよ」
「あれ、おかしいな。いや、機体が揺れてんじゃね?」
「全く。揺れてるのは八幡だけ」
ふう。こんなんじゃ心配だね。大丈夫かな?
「八幡、うちの両親に会ったら心臓止まっちゃいそうだね」
「…ああ。止まるかもな」
冗談でも止めてね。もう八幡は私の人生で必要な人なんだから。いなくなったらどうしたらいいのかわかんないし。
しょうがないなぁ。
私は左手で八幡の手を握る。一瞬ビクッとしたが、すぐに握り返してくれた。
心地いいなぁ。
「…うし。やるか」
「うん。がんばって」
私はふと右手を見る。
色々と不格好ではあったけど、八幡の気持ちが詰まったモノ。その不格好さも八幡っぽくて好きだし。
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