第10話 『友人』
――共同墓地に出没するゾンビメーカーの討伐。
キャベツの収穫から数日が経ったある日、あなたはギルドでおかしな依頼が貼り出されているのを発見した。
ゾンビメーカーとは質のいい死体に憑依する悪霊の一種で、他の死体を手下として操ることができるモンスターだ。
脅威度は低く、一般的に駆け出しの冒険者パーティーでも十分討伐が可能とされている。
そんなゾンビメーカーの討伐依頼なのだが、何がおかしいかというと出没している場所がおかしい。
あなたが知っている共同墓地とはウィズが定期的に魂を天に還す儀式を行っているという場所なのだ。
実際に儀式を見たことは無いが、彼女からそんな話を聞かされた記憶がある。
アンデッドの王とも呼ばれるリッチーであるウィズは彷徨える魂達の声を聞くことができ、碌に葬式もしてもらえなかったことで現世に留まり続けている魂を解放しているのだとか。
あなたはウィズが魂やゾンビを使ってよからぬことを企んでいるとは露ほどにも思わなかった。
その程度にはあなたはウィズを信用も信頼もしている。
だが実際に依頼はこうして出されている。
ギルド側の勘違いという可能性もあるが、ここは一度ウィズに話を聞いてみる必要があるかもしれない。
■
「……えっと、それ、多分私だと思います」
あなたからゾンビメーカーの話を聞いたウィズは、とても気まずそうにそう言った。
「私が墓地に行くと、まだ形が残っている死体が私の魔力に反応して勝手に目覚めてしまうんです。恐らくそれがゾンビメーカーと勘違いされてしまったのではないかと……儀式自体はずっと誰も起きていないような深夜に行っていたんですけど」
たまたまその時間に通りかかった何者かに知られてしまったということなのだろう。
今まで知られていなかったのは運が良かったに過ぎない。
「と、討伐依頼を出されているのならこのまま儀式を続けるというのはまずいですよね。でもそうなると彷徨える魂達が……」
確かに討伐依頼が出ている以上、ウィズはいずれ冒険者と鉢合わせることになる。
恐らく出てくる相手は駆け出しなのでウィズであれば口封じなり記憶操作なりでどうにでもなるだろう。控えめに言って善人なウィズがその手段を取れるかどうかは別として。
だがそもそもの話、その儀式をウィズがやる必要はあるのだろうか。
「勿論これは本来プリーストの方がやるべき仕事です。ですが、この街のプリーストさん達は拝金主義……いえその、そういったお金の無い人達は後回しにしているといいますか……」
あなたからしてみれば特に珍しい話でも無いと思うのだが、ウィズにとっては同胞とも呼べる死者の魂が放置されているというのは許容しがたいらしい。
「私としては埋葬されている人達の魂が迷わず天に還ってくれれば墓地に行く理由も無くなるんですが……ど、どうしましょう……?」
あなたは回復や呪いを弾く魔法は使えるが死者の魂の浄化などできないしやり方も分からない。
アンデッドだろうが死者の魂だろうが綺麗さっぱり消滅させる自信ならばいくらでもあるのだが。
「あの、お願いですから共同墓地の魂を相手にはやらないでくださいね? ほんとに駄目ですからね?」
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