第118話 ★《ダーインスレイヴ》
とはいえダーインスレイヴが普段使いのできない、持っていて嬉しいコレクションの一つになることは避けられないだろう。
「しょうがないとはいえ、ちょっと勿体無いですよね。折角あなたならダーインスレイヴを問題なく扱えたのに」
もしかしたらゆんゆんも使えるのではないだろうか。
会話の流れであなたは適当な軽口を叩く。殆どリップサービスのつもりだった。
「いやいや、私なんかじゃ普通に無理ですよ」
だがゆんゆんの苦笑を見た瞬間、あなたの脳裏に電撃的な閃きが走る。
レオは言っていた。ダーインスレイヴを真に扱うことができるのは精神的超人。鋼の理性を持つものだと。
それならば、紅魔族の里で生まれ育ちながらも紅魔族に染まる事無く、一般的な感性を保ち続けてきたゆんゆんもダーインスレイヴを使いこなせるのではないだろうか? いや、きっと使いこなせるはずだ。
普段は打たれ弱いが、本当の意味で崖っぷちに追い詰められた彼女が発揮する精神力はあなたもよく知るところである。
仮に剣に呑まれた場合は普通に気絶させて取り上げればいいだろう。
思い立ったが吉日。
あなたは早速ゆんゆん強化プランの一環として、ダーインスレイヴを試してもらうことにした。
試してもらうことにしたのだが。
「いやそんな、私ならきっとダーインスレイヴを使いこなせるって言われても。申し訳ないですけど期待されても絶対持ちませんよ? だから早く鞘に入れてください。そもそも私、長剣とか使ったことないですし。っていうか普通に怖いから嫌、ちょ、なんですか、だから持ちませんって。いけるいけるじゃなくて。ワンチャンとか絶対無いですから。ほんと待って、鞘、鞘から出したまま無理矢理持たせようとするのやめてっ……やだっ、放して! 絶対やだ! やだやだやーだー! やーなの! やー!!」
追い詰め方が悪かったのか、速攻で泣きが入ったので断念せざるを得なかった。
軽く退行するほどとは、ゆんゆんはどれだけダーインスレイヴを持ちたくないのだろうか。
どこまでも不憫な魔剣に、あなたは深い同情の念を向けるのだった。
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