第119話 最近私が可哀想すぎる気がします
「リカシィは魔王領から海を隔てた遠い地にあるとはいえ、闘技大会は世界中から多くの要人が一箇所に集まる、魔王軍からしてみれば絶好の機会。主催であるリカシィは連中に対して最大級の警戒を払っていますわ。無論わたくし達も同様に」
それもそうかとあなたは納得する。
各国から招待した客人に死人でも出ようものなら、リカシィの面目は丸つぶれ。
被害の規模次第では決して無視できない混乱が世界を襲うだろう。
「だからこそ、カルラ様の一件を耳にした時は心底肝を冷やしましたわ。トリフを抜け出して竜の谷の探索に参加した挙句、現地で行方不明になるというだけで十分すぎるほど大問題ですのに、あなた達が偶然救助していなければ最悪そのご遺体がリカシィ国内で発見されていたかもしれません。そうなるとアレ、ほんともうアレ。ちょっとここでは言葉に出来ないくらいアレですわ。マジでくっそヤベーことになってますわよマジで」
一瞬でリーゼの語彙が壊滅したが、それほどまでに紙一重だったということだ。
あなた達があの日、あの時、あの場所にいて、ゆんゆんが川を流れる遺体を引き上げたいと思う善良な心の持ち主であり、あなたがリザレクションを超越した復活の呪文の使い手であり、カルラがあなたに反射的に復活の呪文を使わせるほどラーネイレに酷似した容姿を持っていたからこそ、全てが丸く収まった今がある。
ラーネイレがそうであるように、カルラもまた運命に愛された人物なのかもしれない。
■
かくしてゆんゆんが王女アイリスという新たな友を得た翌日。
今夏一番の暑さを記録する猛暑の中、誰もが待ち望んだ闘技大会が遂に幕を開けた。
そしてこの日、あなたはかつてない驚愕と感動と後悔に同時に襲われることになる。
他ならぬ、ゆんゆんの手によって。
[9]前 [1]次話 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:12/12
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク