ハーメルン
このすば*Elona
第119話 最近私が可哀想すぎる気がします

 資料の写しが欲しければ写本でやれというスタンスである。

 ……とまあ、図書館についておおまかにそんな説明をあなたはゆんゆんから受けた。

「ほら見てください、この線で囲まれた場所、全部が図書館の敷地なんですよ。このおっきな建物全部に本があるって考えると眩暈がしそう。私なんかじゃ一生かけても読み切れなさそうです」

 図書館入りを待つ人の列に並ぶ中、帝都の地図を広げたゆんゆんの薀蓄のように、帝都広しとはいえ、一つの区画でこの図書館ほどの規模を誇る場所は帝城、そして闘技大会の会場くらいのものだ。
 図書館自体はベルゼルグにも王都や大きめの町に幾つか点在しているのだが、トリフのそれは他所の図書館とは一線を画した規模を誇っていた。なんと内部には土産物店やカフェもあるらしい。ここまで来ると立派な一つの観光施設といえる。

 その後、入念な手荷物検査を行い、ようやく入館を果たしたあなた達の目に最初に飛び込んできたのは、一際目立つ中央の巨大な四角柱。

「ふわぁ、おっきい……」

 生まれて初めて見る想像を絶した光景に、ゆんゆんが感嘆の声をあげた。
 あなたもまたぽかんと間抜けに口を開けて視線を上層に向ける。

 現在あなたのいる場所は一階から五階までの吹き抜け構造になっているのだが、四本の支柱と柵で囲まれた柱が建物を貫くように天井まで伸びていた。
 柱と評しこそしたものの、実際のところは建造物に近い。透明なガラス板で覆われたそれの内部は本棚が円柱状に配置されており、四角い積み木を積み上げているかのように階層を分けて作られている。
 そうやって見上げるほどの高さを持つ天井にまで到達した本棚の山は、さながら本の塔といったところか。

 先のゆんゆんの言葉を裏切らない、眩暈がしてきそうな景色だ。
 あなたは本の塔の天辺を見上げ思わず唸る。
 イルヴァのどこの国でも、このようなものはお目にかかったことがない。
 この場に友人である元素の神の狂信者がいれば、さぞかし期待と興奮に目を輝かせ、不気味に笑ったことだろう。
 ただし知識を貪欲に求める彼は廃人の例に漏れず極めて自己中心的であり、さらにあなた以上に他者を顧みない性格なので、絶対にこの場に連れてくるわけにはいかないのだが。間違いなく好き勝手に希少な本を強奪する。

「じゃあ私はダーインスレイヴの伝承とかそっち系の本を探しますけど、あなたはどうしますか?」

 以前のあなたであれば、異世界にまつわる本を探し求めただろう。
 だがバニルや女神エリスを通じて全うな手段では帰還の手がかりを得られないと知った今のあなたは、正直そこまで図書館に帰還方面の期待をしていない。
 それに図書館には来ようと思えばいつでも来ることができる。
 なので少し考えた後、適当に新刊コーナーをぶらつくことに決めた。

「了解です。じゃあまた後で」

 一度ゆんゆんと別れる形になるが、館内のあちこちに警備のゴーレムが立っているので心配は無用だ。

「結構可愛いですよね、あれ。図書館のパンフレットの表紙にも描かれてましたし」

 壁際に無言で佇む130cmほどの小柄な体躯のゴーレムを指してゆんゆんはそう言った。

 大きな真ん丸の白い頭部と黒い胴体を持ち、骨のように細長い手足を生やすというデフォルメの利いたコミカルな人型の外見の持ち主は図書館全域になんと数千体が配備されているらしい。

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