ハーメルン
このすば*Elona
第122話 おてんば姫たちのお茶目で可愛い悪巧み

 ──これは闘技大会初日の前日、その夜半に起きた出来事である。

「ふう、終わりっと。結構長くかかっちゃった」

 今日のぶんの日記を書き終えたゆんゆんは、壁にかかっている時計を見やった。

「うわ、もうこんな時間。明日は朝早くから会場に行くって言ってたし、私もそろそろ寝ないとね……」

 独り言が多いのはぼっちが長かった彼女の癖だ。
 大きく伸びをして固まった体を解し、ベッドに向かう。
 そのタイミングで、ゆんゆんの部屋の扉が小さくノックされた。

「……誰だろ、こんな時間に。はーい、どなたですかー?」

 軽く誰何するも、扉の向こうからの返答は無い。
 この時点でゆんゆんは早くも相手があなたやホテルの従業員でないことを察する。

「もしかしたら怪しい人かも……」

 音を立てないようこっそりとドアアイを覗き込む。

「──!?」

 ゴン、と。
 驚きのあまり勢いよく扉に頭をぶつける紅魔族の少女。

(なんで!? ほんとなんで!?)

 痛みを感じる暇も無い。軽くパニックに陥りながらも急いで扉を開ける。
 果たして部屋の前に立っていたのは。

「ゆんゆん、こんばんは。こんな時間に申し訳ないのですけど、少しお部屋にお邪魔させてもらってもいいですか?」
「先ほどぶりですわね。ところで今凄い音が聞こえましたが、大丈夫なんですの?」
「あ、アイリス様、リーゼさんまで……」

 目立たないように全身を覆い隠すローブを着た二人の貴族。
 まさかと思ったゆんゆんが慌てて周囲を見渡すも、どこにもあなたの姿は無い。

「何を心配しているのか分かりませんが、この場にいるのはアイリス様とわたくしだけですわ。あと隣の部屋の彼の差し金でもありませんわよ」

 リーゼロッテの簡潔な説明に、自分に用があるのだと理解したゆんゆんは、そのまま二人を部屋に招き入れる。

「ちょっと消音の魔法をかけさせてもらいますわね。部屋の外に音が聞こえるとまずいので」

 部屋に入った途端、これから面倒な話をするとゆんゆんに教えるかのような魔法を使うリーゼロッテ。
 ゆんゆんは猛烈にあなたに助けを呼びたくなった。

「あの、その前にお聞きしたいんですけど、お二人はどうやってここまで? まさかお城から徒歩で?」
「それこそまさかですわ。わたくしがあらかじめ貴女の部屋の前をテレポートの転移先として登録しておき、帝城のアイリス様のお部屋から直接飛んできたのです」

 あまりにも万能すぎるテレポートという魔法は、星の数ほど悪用する方法がある。
 魔王軍も使用可能なこの魔法によるテロを予防すべく、王族が住むような城にはテレポート防止の結界が張られている。
 ベルゼルグやカイラムの城内でも、テレポートを使いたければ特別な術式が施された専用の部屋を経由しなくてはならない。
 あるいは結界をものともしない魔力の持ち主が無理矢理強行突破するか。

「まあわたくしも結界をぶち抜けるっちゃぶち抜けるのですが、それをやってしまうと事が露見してしまうので。なのでアイリス様のお部屋に転移部屋と同じ効果を持つ絨毯(国宝クラス)を持ち込み、誰にも知られることなく合法的に抜け出した、というわけですわ」

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