第122話 おてんば姫たちのお茶目で可愛い悪巧み
──ジャスティスレッドバケツガールが実は敗者に追い討ちをかけるダーティーブラックバケツガールだったというわけではなく、たまたまそういう訓練を積んでいただけだと?
──恐らくは。ただ訓練相手はバケモノか悪魔かなんかじゃないんですかね。鳩尾に杖を突き刺してからのゼロ距離三連ライトニングとか、大会じゃなかったら普通に殺意が認められるレベルの攻撃を無意識でやるくらいですから。しかもそこから追撃しようとしてましたし。
解説のフォローによって、ジャスティスレッドバケツガールの評判と印象が悪くなるのはすんでのところで避けられた。
半泣きになりながらかなり本気で解説に感謝の念を、武闘家に謝罪の念をそれぞれ送るゆんゆん。
気を取り直して武闘家を優しく場外に運んでから趨勢の決まった戦いに戻る中、ふと観客席に目を向ければ、そこには声を張り上げて笑顔で喝采をあげるという非常に珍しい師匠の姿が。
こうして強くなれたことについてはとても感謝している。
この道を選んだのは自分だということも理解している。
自身の無力さを痛感した日に抱いた願いに一欠けらの陰りも後悔も無い。
だがそれはそれとして。
(そんなんだから解説の人にバケモノとか悪魔とか言われるんですよ! 分かってるんですかそこんとこ!? 魔法使っててもこれウィズさんの修行とは全く関係ない部分ですからね!?)
心の声は決して届かないし正体がバレるので届けてはいけないと分かっていても、つい思わずにはいられないゆんゆんであった。
■
ブラボー! いいぞ! とてもよかった。花丸をあげたい気分である。大変よくできました。
ゆんゆんが武闘家を半殺しにした一連の攻防を見て、彼女に近接戦闘の術を比喩表現抜きで叩き込んでいるあなたは大いに満足していた。
今の光景を見ることができただけで、ゆんゆんが大会に出た意味は大いにあったと断言できるほどに。
訓練と同じように実戦で動く、ゆんゆんが今やったのはまさにそれだ。
言うは易く行うは難し。特にゆんゆんのような優しい心を持つ少女にとっては。
見たところ、集中力が欠けた状態だからこそ偶然発生した、解説の言うとおり無意識下での反撃だったようだが、あれを意識的にやれるようになった時、ゆんゆんは今よりもずっと強くなっているだろう。
弟子の心、師知らず。
師の心、弟子知らず。
それはまさしく今のあなたとゆんゆんを指し示すに相応しい言葉だった。
[9]前 [1]次話 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:9/9
[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク