第125話 死線に踊る
【PM14:05 地獄へのゲート消失および結界解除まで残り23時間55分】
少し離れた場所で観客をどうするか話し合いを始めたリーゼ達を気にすることなく、あなたは一人で地獄に続く亀裂……ゲートの前で待機していた。
24時間耐久ジェノサイドパーティー。またの名を人間がダメなら悪魔を殺せばいいじゃない大作戦のために。
内容はこうだ。
あなたが地獄へのゲートの前に陣取って、出てくる悪魔を手当たり次第に殺す。
仮に処理漏れが発生した場合は他のメンバーで対処する。
これを24時間、状況終了まで続ける。
ルールとマナーを守って楽しくジェノサイドパーティーしよう!
あなたは沢山殺すことができて楽しい。人間側は死人を減らせて嬉しい。女神エリスは悪魔の残機が減って嬉しい。
三者三得、趣味と実益と大義を兼ねた史上最高に賢い作戦といえるだろう。テンションが上がりすぎて残像を生み出しそうな勢いだ。
悲劇が喜劇に転がり落ちるのは半ば確定した未来だが、女神エリスは一流の悲劇より三流の喜劇の方がずっと好きだと言っていた。何も問題は無い。
あなたは殺戮に餓えていたが、憎しみに支配されているわけではない。
これは衝動的ながらも健全な心の動きによってもたらされたものである。
あなたはただ、久しぶりにジェノサイドパーティーがやりたいだけなのだ。
悪魔が本格的に攻めてくるまではいつものように作業的に殺すが、何十匹か殺して心身が温まってきたら本気を出す予定である。
ゲートの向こう側、地獄に突入する案も考えたが、万が一テレポートのような転移技を食らって戦線離脱してしまった場合、テレポートを使って闘技場もしくは地獄のゲート前に戻ってこれるのかが不明なので安定択を採ることにした。
ジェノサイドパーティーは24時間続くのだから、血気に逸って損をすることもない。バニルとの約束もある。いのちだいじに。
一方でゆんゆんや王女アイリスといった他の防衛戦力はゲートを囲む形で陣を組んでおり、下手をしなくても味方の攻撃があなたに当たる恐れがある。
危ないからもう少し離れるようにと指示を受けていたりするのだが、あなたはこれを完全に無視した。自分のことは気にせず攻撃すればいい、と。あなたは後ろ玉に当たるような未熟者ではない。
いのちだいじにはどうしたという意見も出るだろうが、あなたの線引きではこれは余裕でセーフということになっている。つまり今のところ命の危険は一切感じていない。そういう意味では雑用依頼も味方からの集中砲火もあなたにとっては同じようなものである。
実際にあなたが命の危機を感じるような事態に陥った場合、生存者の数は絶望的なものになるだろう。闘技場が極めて高い確率で更地になるからだ。
さて、そんな何が出てくるのか分からない地獄に続いているというゲートの向こう側は見えない。見えないのだが、あなたは何者かがゲートの前にいる気配を感じていた。
なのでダーインスレイヴをゲートに突っ込んでみる。特に理由は無い。思慮深いように見えてあなたは割と衝動的に動く人間だ。
案の定何かに突き刺さった感触が返ってきたので、そのまま勢いよく上に振り抜く。手ごたえがあったので多分死んだのだろう。引き抜いたダーインスレイヴの刀身は、青い血でべっとりと汚れている。
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