ハーメルン
このすば*Elona
挿話集 勇者、悪魔、女神、そして……

 だが転生特典とは選んだ者によって千差万別であるがゆえに、初見殺し性能が極めて高い。
 この道具はその優位性を完全に消し去るものだった。

 完全に対転生者戦に特化した神器。
 何故こんな神器が存在するのか?
 その理由はまさしく神のみぞ知るといったところだろう。
 だが事実、この神器はこれ以上ない形で活躍をした。同じ星からやってきた者達を殺すという形で。

 さて、再度繰り返すが、あらゆる特典には対処方法が存在する。
 これは転生者カウンターも例外ではない。
 転生者同士の戦争で無敗を誇ったかつての所有者は、戦後、この世界の現地人……つまり転生者ではない人間からの暗殺という形であっけなく命を落とした。

 話を戻そう。
 伊吹がこの道具を発見した当時、カウンターには10149の数字が記載されていた。
 つまり、伊吹がカウンターを発見した時、この世界には累計で10149人もの転生者が送られていたということになる。

 伊吹はこの数字を理解した瞬間、愕然とした。
 一万人以上の地球人がこの世界に送り込まれているという事実に。
 そして、これだけのチート持ちを使っても魔王軍を打ち倒せないどころか、ようやく魔王軍と拮抗しているという現状に。

 追い討ちをかけるように10150に変化する数字。
 まさしく今この瞬間、新たな転生者がこの世界にやってきた事を知らされた彼は、二つの感情を胸に抱く事になる。

 地球人を送り続けるだけで本気で介入しようとしない神への不信。
 そして、転生者を送り続けることは本当に正しいことなのだろうか、と。
 その後、勇者としての伝手を用い、カウンターの数字が増えるたびに転生者の調査を行ったが、転生者カウンターが正しく機能しているという無常な事実が明らかになるだけだった。

 葛藤と思索の果て、彼は一つの結論に至る。
 すなわち、この世界において本当に正しいのは魔王軍であると。

 善悪の話ではない。
 正義の在り処にも興味は無かった。
 互いが互いを憎みあって戦争をしている以上、それを語ることはあまりにも不毛だと思ったから。

 それでも自分にとって正しいのは魔王軍だと確信を抱いていた。

 異世界より招かれた勇者が世界を救う、といった物語は現代地球において溢れかえったものだ。
 異世界と言わず、事態と関係の無い相手に事態の解決を乞い願うという形であれば古今東西の物語や歴史で見かけられる。

 外様に頼らず、自分の力だけで解決すべきだとは伊吹も思っていない。
 誰だって出来ることと出来ないことがあり、そして人に頼ることは大事だと知っている。
 だが、それでも。
 身の丈に余る力を与えた転生者を千年以上に渡って一万人も送り込んで魔王軍に勝てないどころか、拮抗という形で無理矢理延命をしているこの世界……いや、この世界の人類は、どう考えても間違っている。彼はそう結論付けた。
 転生者はしばしば特典をチートと呼称するが、なるほど、まさしくこれはチート(ずる)だ。
 これならいっそ滅んでしまった方がいいと思った。むしろ魔王軍に同情すらした。倒しても倒してもどこからともなく強力な力の持ち主が出てくるのだから、ズルだろふざけるなと文句の百や二百……いや、一万は言いたくなるだろう。

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