第129話 樹海に奔る血染めの流星
【冒険の断章】
今日、樹海の中で流星を見かけた。
空じゃなくて樹海の中で流星ってなんだよって話だが、やたら速くて眩しかったので流星としかいいようがない。
正体は不明。遠目に見ただけだが、一緒に見かけた黄金竜と比べるに、そこまで大きくはなかったと思う。
そんな流星に黄金竜の群れは抵抗も許されず一方的に虐殺されていた。
あれはやばすぎる。遠くから見ていただけで殺されたと思った。
他のモンスターと比べても明らかに格が違う。樹海の主のような存在? そんなのがいるという話は聞いた事が無いが、いてもおかしくはない。
いずれにせよ絶対に近づくべきじゃない。見かけたら死ぬ気で逃げるべきだ。
――とある探索者が遺した手記
■
しばらくの間粘ってはみたものの、まるで対話らしい対話が出来なかったあなた達。
アルラウネの集落からは一時離脱せざるを得なかったが、集落で情報を仕入れてあなた達に合流したオーリッドが集落に何が起きているのかを教えてくれた。
「私が散歩に出た日だから……だいたい十日くらい前から、夜になるとアンデッドになった人間の軍勢がめっちゃ攻めてきてるみたい。皆がやたらキレ気味だったのはぶっちゃけ寝不足のせいね」
アンデッドの軍勢。
その単語を耳にした瞬間、あなたとゆんゆんは無意識のうちにパーティーメンバーである不死の女王に目を向けていた。
最上位にして伝説級のアンデッドであるリッチーが近づくと、形が残っている死体は魔力に反応して動き出すし、現世を彷徨う亡霊達も勝手に集まってくる。
そして千年樹海には志半ばで散っていった者達の亡霊が今も徘徊しているのだという。
「……? …………!?」
あなたとゆんゆんの視線に気付いたウィズは最初こそ不思議そうにしていたものの、すぐに視線に込められた意図を理解したようで、盛大に焦った表情で違います私のせいじゃありませんと首と手のひらを勢いよく横に振って全身で無罪アピールを始めた。
アンデッドと聞いてつい反応してしまったが、確かにウィズが原因ではないのだろう。アンデッドが集落を襲い始めたのはあなた達が竜の谷に入る前、つまりウィズがアクセルにいた時からなのだから。
「どしたの? 虫でも飛んでた?」
「い、いえ、こちらの話ですのでお構いなく。ところでアンデッドの軍隊がどうしてアルラウネの集落を襲うんですか?」
「皆はエリー草を欲しがってるんじゃないかって言ってたよ。まだ喋れるアンデッドがエリー草エリー草って何度も呻いてたんだってさ」
竜の谷に満ち溢れる異質かつ強大な魔力によって、この地で生まれたアンデッドは何度滅ぼしても夜のたびに這い上がってくる。
単純な力では彼らを永遠の眠りにつかせることはできない。
それはつまり、半強制的にノースティリス的生活を強いられることを意味していた。しかも肉体は中途半端にしか復活しない。この世の地獄だろうか。
彼らを本当の意味で終わらせるには、プリーストが持つターンアンデッド系のスキルを使うか、全てを忘れ去るほどの長い時間の果てに魂が擦り切れるのを待つ必要がある。
■
「アンデッド達を天に還してあげようと思っています」
オーリッドが去った後、強い決意と使命感を瞳に湛えたウィズが宣言した。
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