第130話 断頭の獣『ヴォーパル』
【No.4:癒しのジュアの狂信者】
イルヴァに名高き廃人達を紹介していくという、先日友人からお前の頭ノースティリスかよと呆れられた(極めて遺憾である)地獄のようなコーナーも晴れて四回目となった。
私の予想に反してこのコーナー、読者諸兄からの反響が非常に大きいのが恐ろしくもあり嬉しくもある。恐れ多くもかの高名な(プライバシー保護のため省略)氏から応援のお便りを頂いた時は私も目と自身の正気を疑ったものだ。
今のところ編集部や私の自宅が廃人やその手の者に襲われ更地にされるといった事件は発生していない。どうでもいいと捨て置かれているのか、あるいは時期を待っているのか。個人的には前者であってほしいと願って止まない。
愚にもつかない私事はここらへんにして、今回紹介していくのは恐らく最も世間的な知名度が高いであろう廃人、通称癒しの女神の狂信者だ。
彼の名は――
(中略)
さて、ここからは表面的なプロフィールではなく、もう少し突っ込んだ話をしていこう。
癒しの女神の信奉者である彼は、かのレシマスの迷宮を踏破した冒険者だ。
廃人の例に漏れることなくノースティリスを主な活動拠点としているわけだが、少し調べてみれば世界各地に彼の冒険の足跡が残されているのが分かる。
活動的で探求心に富み、未知と冒険と戦いをこよなく愛し、希少な物品や剥製の収集を行う。
彼は廃人という良くも悪くも個性に溢れすぎた者達の中で最も冒険者らしい冒険者と表現できるだろう。
それゆえか、馬鹿と冗談を煮詰めたとしか表現できない廃人達の中では相対的に常識と良識を兼ね備え、なおかつ我々の道理が通じやすい人物でもある。
私は今回の企画にあたって全ての廃人と会ってきたわけだが、仮に上司から廃人の中から誰か一人を選んで長期に渡る密着取材を行えと命令されたら私は迷わず彼を選ぶ。そしてそんなクソのような命令をしてきた上司をサンドバッグに吊るしてもらうように依頼する。絶対に。絶対にだ。
友好度は中。危険度は低。
極めて雑で身も蓋もない表現になってしまうが、彼は廃人の中で最もとっつきやすい人物といえる。
彼もまた自分ルールの中で動く者であることは周知の事実だが、それでもこれまでに私が紹介してきた三名と比較すればその接しやすさはまさにかたつむりとクイックリング。
彼と付き合っていけないようでは廃人と友誼を結ぶなど夢のまた夢と言わせてもらおう。そのような奇特な人物がイルヴァ全域を見渡したところでどれだけいるのかは別として。
だがゆめゆめ忘れることなかれ。彼もまた廃人の一角であるということを。
私がここでどれだけ彼を褒め称えた文章を記そうとも、それは所詮廃人という手の施しようがない者達の内における相対的評価に過ぎない。
地を這う蟻に対して我々が感じるような、限りなく無関心に近い寛容さ。
一見すると人当たりが良い彼がごく一部の気に入った者や親しい者以外に向ける感情とは、我々からしてみればそういうものなのだから。
次頁から始まる彼のインタビューはそれを如実に感じさせるものとなっている。
――『イルヴァwalker、914号』より抜粋
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エリー草が発する擬似エーテル光を塗り潰す、目を奪われずにはいられない神秘的な青白。
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