ハーメルン
このすば*Elona
第130話 断頭の獣『ヴォーパル』

 その首には修復不可能なまでに破損した懐中時計がかかっており、下半身は完全に消し飛ばされている。
 そしてその傍らにはあなたの腕だった肉塊がこびりついた断頭剣が、さながら墓標のように地面に突き刺さっていた。

「…………」

 あなたの足音を聞き届けたのか、ヴォーパルがあなたに敵意の篭った鋭い目を向けてきた。
 辛うじて生命が尽きていない事は分かっていたのであなたに驚きは無い。それでも驚嘆すべき生命力ではあるが。
 隻眼で睨み付けてくる瀕死の獣に何かを言うでもなく、あなたは一つの道具を取り出した。

 道具の名はモンスターボール。
 かつてベルディアを捕獲した道具であり、カイラムで譲り受けた神器の一つである。

 あなたがイルヴァから持ち込んだモンスターボールは転移の影響で変異し神器となった。
 だがこれは違う。あなたを正規の所有者と認めていない。
 強制的に捕獲できたベルディアの時とは違い、捕獲する相手を自身の力で打倒する必要があり、なおかつ対象の同意を得る必要がある。

 その為にこの神器には魔物とも意思の疎通を図る事ができる機能がある。
 あなたは紅白の球体を身体に当てて獣を誘った。自分の仲間にならないかと。

 だがヴォーパルはあなたを一蹴し、嘲笑った。
 群れるなど断じて御免であり、救いなど求めていないと。
 敗北とは死だと。そうであるべきだと。

 ヴォーパルから伝わってくる意志は固い。
 あなたは心の底から残念だと思ったが、同時にそれでこそだとも感じる。
 頷いて手を引けばヴォーパルは小さく鼻を鳴らし、静かに目を閉じ――その生涯を終えた。

 あなたは暫し目を瞑り、ヴォーパルに感謝と礼を込めた黙祷を捧げる。
 願わくば次はイルヴァに生まれてくるようにと。

 得難く、素晴らしい敵だった。無粋にもこのまま死なせるのが惜しいと考えてしまうほどに。
 そんな相手がこのまま野晒しにされたり躯を貪られるのをあなたは望まない。
 あなたは獣の遺骸を断頭剣と共に回収し、その場を立ち去るのだった。

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