ハーメルン
このすば*Elona
第131話 憧憬と羨望


 後にこう述懐した老魔法使いは、一人の人間としては些か問題がある人物だったと言えよう。

 そんなコミュ障でぼっちと化した少女は、職人が手がけた人形の如く整った無表情の下で静かに嘆息し、思考する。
 今日まで粘ってはみたものの、これ以上ここで時間を浪費し続けるのは無意味だと。何より退屈でしょうがないと。
 聞けば自分と遊んでくれたクラスメイトは、学院の卒業後に宮廷魔道士になったという。しばらくぶりに顔を見に行こうか。また遊んでほしい。
 それは年齢相応の子供らしく可愛らしい考えだったが、件のクラスメイトもまた少女に心を折られた犠牲者の一人だ。しかも被害者の中でも一等惨い折れ方をしている。
 自身の心を圧し折ってトラウマを刻み込んだ相手が会いたがっていると知れば、間違いなく膝が砕け、胃に穴が空き、治療中の精神が今度こそ再起不能に陥るだろう。

「ねえねえ、ちょっといい?」

 だがジュースを飲み終わり、席を立とうとしたまさにそのタイミングで少女に声をかける者が現れた。
 肩を叩かれたので自分に声をかけてきたのだろうと判断した少女は、顔を上げて振り向いた。
 少しだけ年上の少女だ。13か14といったところだろう。
 格好と首にかけた聖印からエリス教のプリーストだと分かる。

「もしかして貴女も冒険者になりに来たの?」

 少女は無言で首を横に振った。

「あれ、そうなんだ。じゃあどうして冒険者ギルドにいたの?」
「仲間を探しに来た」
「……ええっと、ごめん、それは冒険者の、だよね?」
「他にあるの」

 冷たさすら感じる無表情から繰り出される突き放すような物言いに、自分は何か気に入らない事をやってしまったのだろうかと困惑するプリースト。
 だが少女は思った事を口にしているだけで他意は無い。対人能力が壊滅的なだけだ。
 幸いにして相手のプリーストは善良かつコミュニケーション能力に長けていたので、頑張って意を汲み取り、問いかけた。

「つまり、もう冒険者になってるから、冒険者になりに来たわけじゃないって事?」
「……? 最初からそう言ってる」

 言ってないよ!? 全然言ってないよ!?
 そんな言葉をプリーストは辛うじて飲み込む事に成功した。

「と、とにかく! 貴女が冒険者なのは分かったわ。格好を見た感じからして新人でしょ?」
「そう」
「じゃあさ、良かったら私達とパーティーを組まない? 私達も新人なんだけど、仲間が全然見つからなくて困ってるの」

 プリーストの少女はロザリーと名乗った。
 田舎から幼馴染と共にアクセルを目指したはいいものの、道中で何度も寄り道をした結果、アクセルに到着した時には新人冒険者が仲間を探すシーズンが終わってしまっていたのだという。

「私は見ての通りプリースト。エリス教徒のね。幼馴染……ああ、ブラッドっていう名前なんだけど、そいつは剣士なの。貴女は?」

 剣や弓といった武器すら持っていない少女に尋ねるロザリーへの返答は、極めて簡潔だった。

「アークウィザード」

 何気なく自身の冒険者カードを提示すれば、驚きに目を見開いたロザリーは何度もカードと少女の顔を見やった。

「嘘っ、じょ、上級職!?」
「問題無い」


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