第131話 憧憬と羨望
他は遠巻きからあなた達を観察している。
千を優に超えるアンデッドを残らず浄化したウィズ、そしてヴォーパルという樹海の災厄を単独で仕留めてみせたあなたは、完全に人間扱いされなくなっていた。
「樹海の脅威と目障りなアンデッドを取り除いてくれた事には感謝します。ですが我々が再び会う事は無いでしょう」
相変わらずの塩対応にあなたは力強く頷く。
エリー草が欲しくなったらまた来ると。
「二度と来るなと言っているのです! 来ないでください! 分かりなさい!!」
半泣きの女王を無視したあなたは、周囲のアルラウネに友好的な笑顔を浮かべて手を振ってみた。
「けえれけえれ!」
「にどとくんなー!」
「ココオマエノクルトコロチガウ!」
「塩撒いとけ塩!」
ブーイングの嵐だが、あなたはこれはこれで楽しかったりする。少なくとも怖気づかれたり命乞いされるよりは遥かにマシだ。
楽しかった。擬似エーテルも見たいので、是非ともまた遊びに来よう。そんな事を考えながら、どこからともなく飛んできた小袋をキャッチする。
「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
突如として見た目からは想像もできない、豚のような悲鳴をあげてのたうち回る女王。
何事かと思ったが、よく見てみれば掴んだ袋は口がしっかりと締められていない。
どうやら投げられた途中で、袋から零れた塩が女王に降り注いだようだ。
アルラウネ達からしてみればかなりの大惨事だというのは分かるのだが、女王の姿は塩をかけられたかたつむり、あるいは硫酸を一気飲みさせられた駆け出し冒険者に酷似していた。体を張った一発芸にあなたはかなり大爆笑である。
「もしかしてバカなんですかね……」
慌てたウィズのクリエイトウォーターを浴びる女王と、そ知らぬ顔で明後日の方を見て口笛を吹く下手人のアルラウネに向けられたゆんゆんの小さな呟きは、あまりにも痛烈で無慈悲だった。
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