ハーメルン
このすば*Elona
第14話 14へ行け

「結局のところ、ご主人はいったい何者なのだ?」

 ベルディアを仲間にしたその日の夜。
 夕食の席でベルディアはあなたにそんなことを尋ねてきた。

「あの異常な剣といい俺を圧倒した戦闘能力といい、本当にこの世界の者とは思えん」

 ベルディアはナイフとフォークを使って食事を器用に口に運んでいく。
 首が取れていても食事は普通にできるようだ。
 あなたとしては採用できる育成の幅が狭まるのは好ましくないので非常に助かる話である。

「もし言いたくないのであれば二度と聞かん。今の質問は忘れてくれ」

 ベルディアが肩を竦めるが、正式なペットに隠す話では無い。
 何故ならあなたのペットになるということは、いずれ共にノースティリスに行くということだからだ。
 あなたは自分がノースティリスという異世界の冒険者であることをベルディアに打ち明けることにした。

「ノースティリス? ご主人はニホンジンではないのか?」

 ニホンジン。あなたが初めて耳にする響きである。
 この世界固有の異世界人の名称だろうか。

「いや、たまにいたのだ。ニホンジンと名乗る何処の者との知れぬ連中が。魔王様は奴らを異世界から呼び出された住人と言っていたか。実際俺も何度か戦ったことがあるのだが、楽な相手は一人もいなかったな」

 それでも今もなお生きているのだから全てを打ち破ってきたのだろう。
 感心するあなたを尻目にベルディアは話を続ける。

「奴らは皆一様に神器や強力な能力を持っていた。てっきりご主人もその類かと思っていたのだが……ご主人の反応を見るに、どうやら違うようだな」

 この世界にはあなたの他にも異世界人がいるようだ。
 もしかしたらノースティリスの者に出会えるかもしれない。
 友人以外の冒険者だった場合は間違いなく逃走されるだろうが。

「それで、異世界人なご主人はその力を以ってこの世界で何を為すつもりだ? 世界でも征服するのか」

 ベルディアの懸念を笑って否定する。
 あなたは使命や野望など持っていない。
 今のあなたはこの世界を楽しむことだけを考えている、ただのエレメンタルナイトだ。

「……なんか、楽隠居した老人みたいだぞご主人」

 実感は無いが、似たようなものなのかもしれない。
 あなたの肉体年齢は二十代だが、生きてきた年月はこの世界の人間からしてみれば既に老人と呼ばれてもおかしくないだろう。

 ベルディアの言葉に一人納得すると同時に、あなたはふと思った。
 見た目こそ二十歳前後なウィズだが、アンデッドでリッチーの彼女は実際何歳なのだろうと。
 今度直接聞いてみてもいいかもしれない。

「平和、平和か……確かにご主人ほどの強さがあれば大抵の場所は平和になるだろうな」

 ベルディアは妙な勘違いをしていた。
 そういう意味ではないのだが、あえて指摘するまでも無いだろうとあなたは捨て置くことにした。
 ペットになったばかりの今のベルディアでは何を言っても理解はできないだろうと判断したのだ。

 放っておいても本人が育成を希望している以上、どうせベルディアは嫌でも思い知ることになる。
 命の価値が硬貨一枚並に軽い場所で戦う冒険者のペットとして生きるというのは、果たしてどういう意味を持つのかを。

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