第16話 空を飛ぶ不思議な生首
「なんか……滅茶苦茶やばそうだな。一目見ただけで分かったぞ」
流石に歴戦の戦士だけあって勘がいい。
《遺伝子複合機》に使われた者は素材だけを残して消滅する。
「死ぬということか?」
遺伝子合成での消滅とは死ではない。
この世界の人間が二度死んだら蘇生ができないのと同じように、本当の意味で終わってしまう。
消えた者がどうなるのか、それは誰にも分からない。
今のところあなたはネフィアなどで支配した敵しか素材に使ったことが無いが、人間の奴隷を素材にする冒険者もそれなり以上に存在する。
「そんな恐ろしいものに俺を突っ込むのか!?」
勿論駄目そうなら何もしない。
他の生物のパーツが嫌なら首を縫い付けるか溶接するなどして物理的に固定してしまえばいい。
「うわあ……」
ドン引きするベルディアの胴体をベースに。
素材にベルディアの頭を配置する。
移せるパーツは素材一体につき一つと決まっているのでベースを頭にすると確実に酷い結果に終わる。
だが最初から部位が一箇所しか存在しない素材を移植したとき、何が起きるのか。
――合成結果:デュラハンの《ベルディア》
――合成部位:頭
――付与スキル:《合体》《分離》
果たして、このような結果予測が出た。
一見しただけでは合成結果におかしな所は無いように思える。
だがこの二つのスキルはいったい何なのだろうか。少なくともノースティリスに存在するものではない。
「合体スキルと分離スキルって何それ怖い」
だが大きな可能性を感じるスキルではある。
生首が着脱可能になれば戦術に大きく幅が出るだろう。ベルディアの個性も死なない。
「個性はともかく、確かにな。危険を押しても試してみる価値はあるか……」
嫌なら止めても良いが、首をくっ付けたいなら他の選択肢は他の生き物の首を生やすか縫合か溶接である。
魔改造されたペット達が跋扈するノースティリスならともかく、この世界では悪目立ちすることはどう足掻いても避けられないだろう。
「基本的にご主人が迫ってくる選択肢ってどれも畜生すぎて吐き気がしそう」
十分ほど悩んだ末、ベルディアは遺伝子合成を行うことを決意した。
■
予想通り、あるいは誰かの期待に反して合成は普通に終わってしまった。
素材の生首は消失して胴体と同じ場所に出現したのだ。
しかし相変わらずベルディアの頭は取れたままである。
「俺には何かが変わったようには感じないな。ご主人はどう思う?」
あなたから見てもベルディアの外見には何の変化も無い。
一度頭を乗せてスキルを試してみればいいのではないだろうか。
「ん、そうだな……では……俺、合体!」
頭部を固定したベルディアが力強く叫ぶが、特に光ったり音が鳴ったりはしなかった。
そのままベルディアは頭から手を離すが、ベルディアの頭は胴体から離れないしぐらついたりもしない。
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