第24話 こんにゃく以外は何でも斬れるわけではない
「……い、生きてますか? 実は幽霊だったりしませんか?」
冬将軍との対峙を終えてゆんゆんの元に戻ったあなただったが、何故かゆんゆんは怯えたように腰が引けていた。
冬将軍のプレッシャーに当てられてしまったのだろうか。
「違いますよ、確かに冬将軍は怖かったですけどあなた達が何をしてたかなんて遠すぎて全然見えなかったし……でも、冬将軍と一対一になるなんてそんなの普通に考えたら殆ど自殺行為じゃないですか……」
どうやらあなたが冬将軍と斬鉄剣と神器《遥かな蒼空に浮かぶ雲》の交換をした場面は見られていなかったようだ。
何も考えずに交換に応じてしまったが冬将軍は本来高額の賞金首だ。ウィズならともかくゆんゆんに冬将軍の武器を手に入れたと教える必要はないだろう。
そしてあなたと神器の交換をした冬将軍だが、確かに敵対イコール自殺と言われても仕方が無いほどにアレは強かった。
あなたに捕獲される前、魔王軍幹部だった時のベルディアも歯牙にかけない極めて高い戦闘力はこの世界はおろかノースティリスにおいても人の形をした死に等しい。
だがそんなに冬将軍が恐ろしいのならば何故ゆんゆんは雪精討伐を勝負に選んでしまったのか。雪精を討伐するという事は即ち冬将軍の怒りを買う事を意味するとこの世界の冒険者であるゆんゆんはよく知っていた筈なのに。
「そ、それはその……さっき冬将軍が出るまでその事が頭からすっぽり抜け落ちていたっていうか……頭が真っ白になっていたっていうか……あれ、なんか頭が冷たい……」
あなたから目を背けたゆんゆんの頭の上には白くて丸い塊、つまり雪精が幾つも乗っている。
なるほど、確かにゆんゆんの頭が真っ白だ。上手い事を言うものだとあなたは感心した。
「違いますよ!? なんで私がちょっと面白いことを言ったみたいになってるんですか…………くしゅんっ!」
ばっさばっさと頭を振って雪精を振り落とすゆんゆんだが、ずっとこの寒空の下であなたを待ち続けていたからだろう。随分と身体を冷やしてしまっているようだ。
雪精は討伐すれば一匹につき十万エリスと高額だがあなた達は現在雪精の討伐依頼を受けていないし斬鉄剣と神器を交換してくれた冬将軍に喧嘩を売る気は無い。
あなたが風邪を引く前にさっさと帰ろうと告げるとゆんゆんは申し訳無さそうにその申し出を受け入れるのだった。
■
雪精の群生地からの帰り道、あなたはゆんゆんにある提案をした。
冬将軍に会わせてくれたお礼に可能な限りゆんゆんの頼みを聞くと。
ゆんゆんはめぐみんの随一のライバル騒ぎでこうして山岳地帯まで足を運ばせてしまった事に引け目を感じていたようだが、あなたが引く気が無いと悟るとやがてこう言った。
「じゃ、じゃあお友達が欲しいです……あの、出来ればでいいです。本当に無理なら結構ですから……」
ノースティリスとこの世界、二つの世界を合わせても両手の指に満たない数しか友人が存在しないあなたにこれはかなりの難題である。
しかし決して不可能な依頼ではない。全力でゆんゆんの友達作りに協力しようではないか。
最も手っ取り早い手段は四次元ポケットの中に存在するアレを使う事だが、さて。
――お兄ちゃん、今私の事を考えたよね? 考えたよね絶対考えたよね? 私の出番かな? 出番だよね? いいよいいよ、私はいつでもばっちこいだよお兄ちゃん! この前お兄ちゃんに抱きついてた黒い髪の女より私の方がずっと役に立つし可愛いって事を証明してみせるよお兄ちゃん! お兄ちゃんの為なら私いっぱい頑張るから早く私を読んで思う存分もふもふぎゅーってすればいいと思うよお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃーん! ヘイカモンマイスイートブラザーフォーエバー! ハリアップ!!
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