ハーメルン
このすば*Elona
第4話 採掘を終えて


 ウィズの物言いを見るに、この世界にも一応四次元ポケットに類する魔法はあるのかもしれない。
 ウィズがお望みならば他にもいくつか見せてもいい。
 どの魔法も一度や二度で尽きるストックではない。

「えっと、じゃあ宝島で見たのを……あれはもう無理? よく分かりませんけど、それなら危なくないやつをお願いします」

 注文の通りに魔法を行使する。
 結果を見たウィズは、あなたの予想通りに目を丸くした。

「え、えぇ……? これってドア、ですよね? ごく普通の」

 あなたが使ったのはドア生成の魔法だ。空間に固定されているので、ウィズが押しても引いても倒れることは無い。
 鍵付きのドアをその場に発生させるだけの魔法。
 流石にこんな魔法は類似品すらこの世界にも存在しないだろう。

 ある意味初級魔法スキルよりも使い道が無い魔法だが、一応狭い通路で敵が寄ってくるのを一時的に防いだり鍵開けを鍛えるのに使える。
 とはいえ、これはあなたが最も使わない魔法の一つだ。自宅の改装中に使うくらいか。
 あなたがドアを強めに蹴飛ばすと、ドアはあっけなくバラバラになって消えていった。あなたにもこの魔法の原理はよく分かっていない。分からないが使えるので使っている。

「えっと、あなたのことはよく分かりました。嘘も言っていないと思います。でも、本当に私なんかに話してしまってよかったんですか……? その、私、リッチーなんですけど……」

 ウィズが伝説のアンデッドであるリッチーなら、あなたは異世界人だ。物珍しさという点ではどっこいどっこいだろう。
 それにこの期に及んで良いも悪いも無いだろうとあなたは笑った。
 あれだけ派手に魔法を使った以上、今更何でもありませんでは済まないし、ウィズも表面上ではともかく、内心では納得しないに決まっているのだから。

 確かに積極的に他者に触れ回ってほしい類の話ではないが、必死になって隠すべきほどのことでもない。
 そんなに他者の注目を浴びたくないのならば、最初から冒険者になどならなければいいのだ。
 大体あなたが受けた依頼を手伝ってくれたウィズに対して何も教えなかったり出鱈目を話すのは幾らなんでも不誠実が過ぎる。

「その……はい、私なんかにそこまで言ってくれて光栄です……でいいんですかね? ってこの本は……? え、依頼を受けてくれたお礼、ですか?」

 全ての鉱石袋の収納を終えたあなたは、今も突然の重大告白に戸惑っている様子のウィズに轟音の波動の魔法書を差し出した。

 これは玄武の上で自分が使っていた魔法の魔法書なので、もしもウィズが読みたかったら読んでもいい。読めればウィズにもあれが覚えられるだろう。
 ただウィズが読めるかは分からないし、そもそも異世界の魔法書なので何が起きるか分からない上、一回読んだら無くなるから読むのなら十二分に注意してほしいと教えて。

「…………えっと、じゃあ、折角ですので」

 ウィズはおっかなびっくりといった様子で魔法書を受け取り、ぱらぱらとページをめくり始めた。
 凄腕アークウィザードとしての知識欲と研究欲が警戒心を上回ったらしい。
 魔法書は目で読むものではないので異世界人のウィズでも問題ない。轟音の魔法書は魔力と読書スキルで読むものだ。

 あなたは周囲に視線を飛ばす。魔法書の読書に失敗すると魔物が召喚される場合があるのだが、あなたの見る限りでは何かが起きる気配は無い。

[9]前 [1]次 最初 最後 [5]目次 [3]栞
現在:2/5

[6]トップ/[8]マイページ
小説検索/ランキング
利用規約/FAQ/運営情報
取扱説明書/プライバシーポリシー
※下部メニューはPC版へのリンク
携帯アクセス解析