ハーメルン
このすば*Elona
第4話 採掘を終えて








「今日は本当にありがとうございました」

 ちょうど月が空に顔を出し始めた時間帯。あなたとウィズはアクセルに戻ってきた。
 ウィズは自分の取り分の鉱石は私的に必要な一部の高品質マナタイトなど以外は全てあなたに換金を任せてくれるという。各鉱石の相場もちゃんと教えてくれるらしい。
 日頃魅力的な品を仕入れてくれるこの極貧リッチーに少しでも楽をさせるため、これは高値で売り払わねばならないとあなたは人知れず気合を入れた。

 あなたにとってお気に入りの店に投資するのは当然の行為である。
 ノースティリスの武器防具屋(ブラックマーケット)に億単位の金を注ぎ込んだこともある。
 そして再度繰り返すが、綿に含んだ砂糖水は断じて食べ物でも飲み物でもないのだ。

「こんな滅多に無い、夢みたいな機会に私なんかを誘っていただけて嬉しかったです。それに、久しぶりに色んなことを知れてとっても楽しかったです」

 まるで昔に戻ったみたいで、とウィズは最後に小さく呟いたが。
 その声は街の喧騒に掻き消され、あなたの耳には届かなかった。





 別れる直前、あなたはまた今回のようにウィズの知識や力が必要になったと感じたら頼りにしてもいいか尋ねてみた。
 あまり彼女に頼る場面があるとは思えないが、一応確認はしておきたかったのだ。拒否された場合他の手段を探しておく必要がある。
 だがそれはとんだ杞憂だったらしい。

「えっと、お店もあるのであんまりたくさん誘われると困っちゃいます。……でも、お店がお休みの日でしたら、いつでも誘ってくださって構いませんよ。……あなたはお得意様で、お店の恩人ですから」

 そう言ってウィズは何かを懐かしむように。
 伝説のアンデッドの王であるリッチーとは思えないような、どこまでも柔らかい微笑みを浮かべたのだった。







 それから暫くの後、あちこちの街で一つの噂が流れた。

 王都をはじめとする大きな町や都市に大量の貴重な鉱石などを持ち込む人間が複数確認されたというものだ。
 性別も年齢も背格好もバラバラな彼らは不思議とその全員が一様に交渉に長けており、足元を見ようとした商人から相場以上の金額を巻き上げたとのこと。

 各地の勘のいい熟練の冒険者やギルドの職員は今年は宝島が地上に出現する年だと察していたが、どの街でも宝島が発見されたという話は聞かなかったので首を傾げた。
 宝島は主に人里に姿を現し、宝島が去った後その街は例外なく異常な好景気に包まれ祭もかくやという大騒ぎになるからだ。

 だが所詮人の噂など煙のようにあっという間に流れて消えていくもの。自身に関係が無いと来れば尚更。
 すぐに誰も彼も謎の鉱石売人に興味を無くし、次の噂話に花を咲かせることになるのだった。

 真実を知るものは誰もいない。
 あなたに億を優に超えるエリスを渡されて卒倒した、ある駆け出し冒険者の街で小さな魔法道具屋を経営する極貧リッチーを除いて。

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