ハーメルン
このすば*Elona
第5話 どうか私をあなたのペットにしてほしい

 端数を省略して六億エリス。

 それが宝島をウィズと二人で鉱石などを採掘しつくし、各地で商人を泣かせながら鉱石を売り捌いた結果あなた達の懐に転がり込んできた金額である。

 ウィズと二分しても三億エリス。ウィズは私的に鉱石を所持しているのであなたの方に若干上乗せ。
 依頼を果たした報酬なので泡銭とまでは言わないが、たった一度の依頼で得た金額としてはあまりにも大金だ。

 一括で渡したとき、ウィズ魔法店の極貧リッチーは卒倒した。
 ちょうど昼飯の時間帯にお邪魔したのだが、ウィズは綿に含んだ砂糖水を口にしていた。気を失いながらも必死に綿を口に含み続けるウィズは誰もが目を覆わずにはいられない悲惨な有様だった。
 あなたはこの三億でウィズの食生活が通常レベルにまで改善しなかった場合、いっそのこと自分が彼女の食事の面倒を見た方がいいのかもしれないと考え始めている。
 こういった形での贔屓の店への投資は初めてだが、もしかしたらウィズにはこちらの方がずっと効果的かもしれない。

 ちなみに冒険者ギルドには宝島の件は当然のこと、この三億エリスも申請していない。ウィズにも固く口止めしておいた。
 あなたは大騒ぎになると確信している。どこで三億エリスなんて大金を手に入れたという話になったら流石に誤魔化しきれない。
 仮にギルドが秘匿を貫いたとしてもやはり駄目だ。絶対に申請するわけにはいかない。

 ここで話は変わるが実はこの世界の冒険者にも納税の義務がある。
 支払いは年に一度なのでノースティリスのように毎月自宅に請求書が届くわけではない。
 それは面倒が無くていいのだが、この一文をよく見てほしい。


――年収千万エリス以上の者はその年の収入の半分を収める必要がある。


 歴戦の冒険者であるあなたをして戦慄を隠せない、身の毛もよだつおぞましい数字だ。
 あなたは初めてこの文章を見たとき、恐らく貴族なのだろうがこの制度を作った奴は気が狂っていると確信した。
 ノースティリスで活動する上位冒険者の全てがあなたの考えに賛同するだろう。
 そして稀に見るシンクロ率を発揮して一致団結し、貴族の集中するこの国の王都で血の粛清と核と終末の嵐が吹き荒れること請け合いである。実際あなたも終末の剣(ラグナロク)を衝動的に抜きそうになった。

 あなたは玄武の一件だけで一億五千万エリスを持っていかれることになるし、様々な理由で他の冒険者が手を付けない依頼を受注しては作業のように消化していくせいでアクセルの冒険者から一緒に依頼を受ける仲間がいなくて寂しい上に頭がおかしい奴と思われ始めているあなたの依頼遂行ペースでは、玄武を抜いても年収一千万エリスなど余裕で超えてしまう。
 それを半分など法外としか表現できない金額だ。想像だけで吐き気と眩暈を覚えるほどに。

 玄武の金額では桁が大きすぎてピンと来ないかもしれないが、これは月収がおよそ百万として、そのうち五十万が持っていかれるという事実を意味する。
 滞納者は問答無用で犯罪者堕ちさせるノースティリスだってこんな頭のおかしい税金の取り方はしない。間違いなく重度のイスの狂気に脳と精神をやられている。
 もしどこかから玄武の件が露見した際、あなたは全力ですっとぼけるか踏み倒す心算である。

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