あなたに向けて
決別をした日の授業はどこか静かに、されどもザワつきを残しつつも進んでいく。
6限目に現れた平塚先生は「ん?どうした?今日はヤケに静かだな…」なんて、空気の読めない発言をしたものの、特定の誰かがそれに答える訳でもなく、ただただ空気と雰囲気だけが時間を支配した。
そんな中、私は平塚先生の授業を聞くこともせずに、スマホに向かって一生懸命にタップを繰り返す。
海老名ーーーーーー
今日は部活あるの?
ーーーーーーーーー
ディスティニーランドでLINEのIDを聞いてから、これでもかと言うくらいにメッセージを送り続ける私。
返ってくるメッセージは淡白で素っ気ない物ばかりだけど、うん、とか、そうか、とか、彼がそう言うであろう姿が容易に想像出来て面白い。
すると、私のスマホが微かに震える。
ーーーーーー比企谷
あるよ
ーーーーーーーーー
海老名ーーーーーー
ないよね。
結衣に聞いたよ。
ーーーーーーーーー
ーーーーーー比企谷
あらら
ーーーーーーーーー
海老名ーーーーーー
デートしようよ。
ーーーーーーーーー
そこでLINEのメッセージは止まる。
あれ?
比企谷くん、照れてるのかな?
なんて思いながら、こっそりと彼の方を盗み見ると、どうやら彼は平塚先生に問題の答えを要求されたようで、嫌そうな顔を浮かべて席を立った。
「…いと恋しければ、行かまほしと思ふ」
「うむ、正解だ。大変に恋しいので行きたいと思う。…とっても良いセリフだな!!」
……いと恋しければ!?
ひ、比企谷くん…、そんなに私と放課後デートに行きたかったんだね!!
アラサーが切なそうに悶えている隙に、私はLINEにてメッセージを送る。
海老名ーーーーーー
そ、そんなに恋焦がれなくても…。
でも、比企谷くんの気持ちは伝わったよ!
ーーーーーーーーー
ーーーーーー比企谷
伝わってたまるか。
ーーーーーーーーー
海老名ーーーーーー
それじゃあ放課後に正門の前で!
あ!スマホの電池切れちゃう!
ーーーーーーーーー
ーーーーーー比企谷
おい待て
ーーーーーーーーー
…よし、後はスルーしておけば大丈夫かな。
まったく、捻デレな比企谷くんはデートの約束をするのも大変だよ。
いと大変だよ。
ふふん、と。
私は数分後に終わる授業のチャイムを待ち望みながら、相変わらず悶え続ける平塚先生の講義を聞き流した。
お外は寒いかもしれない。
あまり歩かせると、比企谷くんがクタクタになっちゃうし。
それなら、やっぱり喫茶店とかでお喋りデートが無難かな…。
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