ハーメルン
実況パワフルプロ野球-Once Again,Chase The Dream You Gave Up-
第5話 早川あおいと高木幸子
早川あおいと高木幸子は、小学生の頃から一緒に過ごして来た幼馴染だった。
小学四年生に上がった頃、早川達が住む地区には『おてんばピンキーズ』と言うリトルリーグが存在し、そこに所属していた。
高木幸子と早川あおいの二人は、チーム内で唯一の女子同士だった為に、すぐ様意気投合して親友になったのには時間はそう掛からなかった。
「ボクね、幸子と野球するの大好き!」
「私もよ! あおいと野球するの大好き!」
幼い二人は満面の笑顔でそう言い合っていた。
この会話は、ずっと続いた。
話題は尽きる事も枯れることなく、毎日言い合って居たので自他共に認めるほどの大の仲良しへと絆を深めて行く。
そして——。
月日が流れ二人は小学校を卒業して中学生となった。
家も近所だったため進学先の中学校も同じだなのも必然的で、二人が所属していたリトルリーグチーム『おてんばピンキーズ』出身という事、出会う切っ掛け、親友と呼べるまでも仲の良さを深めてくれた大好きな野球を続けようと二人は結託し一緒に中学も野球部に入ら事になる。
リトルリーグ時代に培った早川あおいと高木幸子の実力は、チームメイトも度肝を抜くほどであり、一年生ながらもあっという間に『練習試合』のメンバーに抜擢され、そのまま二人は最初の大会では二桁の背番号を貰ってベンチ入りとなった。
一年生がベンチ入り?
下級生の女子に野球の実力が劣っている、中学生と言う精神が未だ幼い年ごろの嫉妬心、負けた悔しさからか、二人のベンチ入りを心良く思わない上級生から『女だからチヤホヤされる』など、心の無い事も何度も言われ続ける早川あおいと高木幸子は、それでも大好きな野球をする為にひたすら無心に練習に打ち込む毎日を過ごしていた。
早川あおいも高木幸子も二人一緒ならどんなに心無い酷い言葉を言われようとも気にしなかった。
幼い頃、出会ったあの頃みたいにまた同じ「野球をやるのが好き」とお互いにグラウンドで言い交わせる日をいつまでもいつまで待ち望んでいたからだ。
しかし、そんな日を迎える事は無かった。
一年生の冬、高木幸子は、突然、野球部を退部してしまう。
それは、雪が降り積もる寒い放課後。
退部に納得の出来なかった早川あおいは高木幸子を呼び出して誰も居ない部室の前で二人座って話をしていた。
「幸子。一体、どうしちゃったの?」
「……あおい。もう無理よ。私には……これ以上、耐えられる気がしないわ」
「そんな事ないよ!! ボクがいるからさ、また一緒に頑張ろう?」
早川はその時、『一緒に頑張ろう』と言う言葉しか言えなかった。
一体、何をどういう風に一緒に頑張れば良いのだろうか……。
堪え難い程、冷やかしや飛び交う揶揄う声をこの先、どれだけ聞き続けなければならないのか……。
練習は、ただの球拾いだけなのに。
一体、どのくらい我慢すれば良いのだろうか。
練習試合は、特別に試合に出れる訳でも無いのに、ただベンチに座っているだけで見せしめのように、周りから色眼鏡で見られクスクスと笑われ続けなければならない日々に、高木幸子は既に好きな野球さえも嫌になってしまっていたのだ。
高木幸子が抱いた辛い痛みを早川あおいも抱いていた。
「私達は……私は『見世物』じゃないわ!! ただ単純に好きな野球が好きで好きな野球をしたかっただけなのッ!! それだけなのに……たった、それだけだったのに……私は……私達は……馬鹿にされてるみたいに笑われるなんて……こんなの望んでないの!!」
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