第15話
遠征から帰還したA級トップチーム――太刀川隊、冬島隊、風間隊は城戸司令の勅令によって、三輪隊と共に玉狛支部に匿われている黒トリガーの争奪任務に赴くこととなった。
太刀川の案で決行は今夜ということとなり、それまでは作戦を立てつつ休息を取ることとなった。
「あれ? 冬島さんは参加しないんですか?」
「乗り物酔いでダウンしてるから無理だな。黒トリガーを相手にする以上戦えないなら戦場に出る必要はない。というわけで唯我、お前も不参加だ。食堂でも行ってろ」
「酷いですよ太刀川さん!」
泣き叫ぶ唯我をオペレーターである国近が宥めつつ、作戦室から追い出した。
なかなかやることがえげつない。
苦笑しながらその光景を見ていた太刀川隊射手・出水公平はもう一つ気になったことを己の隊長に聞いた。
「最上はどうしたんですか? 今回の任務、玉狛を相手取る可能性がある以上アイツが居れば結構スムーズに行けると思うんですけど」
「ああ。俺もそう思って進言したけど三輪の奴に反対された。戦力として数えるには最上はまだ未熟だとな」
「……それ、絶対嘘ですよね?」
「だろうな。何でか知らんが、三輪は……というか上層部は最上には今回のことを黙っているらしい」
三輪が彼に遊真が近界民であることを話さないのは、確かに私情を含んだ個人的な意見だ。しかし上層部は違う。
彼らまでもが今回の件を彼に悟られないようにする理由は――迅の予知が関係している。
迅は、最上秀一が空閑遊真を近界民であることを知れば、最悪の未来が訪れる可能性が高いと言っていた。
このことを遊真を守るために吐いた嘘だと断じることができた上層部だったが、城戸司令はこの忠告を受け止め、彼にはバレないように配慮した。
「勿体ないなー。アイツが居たら仕事も楽なんだけど……」
「相変わらずお前は最上のことを気に入っているんだな」
それを聞いた出水はニヤリと笑い。
「太刀川さんほどじゃないです」
そう言い返した。
太刀川はその言葉を否定することも肯定することもなく、ただ笑みを浮かべるだけであった。
◇
時は遡り。
S級A級B級混合で行われたチーム戦が終わり、少し経った頃。
「――どうだった二人とも? 実際に戦ってみて」
模擬戦を終えて会議室に戻った迅は、今回の模擬戦の感想を風間と太刀川に聞いた。先ほどまでこの場で模擬戦を見ていた風間隊、太刀川隊、鬼怒田、根付、唐沢を抜いた上層部も気になるのか耳を傾ける。
それを受けた風間は表情を変えることなく、しかし言葉に乗せる感情は珍しく喜色に溢れたものであった。
「筋が良いな。スコーピオンの扱いも上手い」
「ええー、そうですかー? あんなの僕だってできますよ」
「おい、菊地原!」
風間の高評価に納得のいかない声を上げるのは、彼の部下である菊地原士郎だ。彼はいつもの毒舌で最上を大したことないと言い、それを同じ隊である歌川が諫める。
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