ハーメルン
俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~
ゲットするんじゃなくてゲットされた。
現在俺は、束さんの部屋に居る。部屋の中は年頃の少女らしさの欠片もなく、壁際はディスプレイが並び、足元は機械とケーブルコードで溢れていた。
しかしなんで呼び出された? 近付こうとしたのがバレたのか? だが、一夏や箒とは今日初めて会った。特に怪しまれる行動もしていない。
「いっくん以外の男を部屋に入れるのは初めてだよ。さあさあ座って座って」
これから何が起きるかわからない。覚悟を決めて束さんの前に座る。
「お話とは何でしょう?」
「そうだね。単刀直入に行こうか。君は。何者なんだい?」
言われた瞬間、心拍数が上がった。
「束さんはね? ちょっと前に“IS”って言うのを作ったんだよ。宇宙空間での活動を目的としたマルチフォーム・スーツなんだけどね。それを学会で発表したんだよ。まぁ凡人共には束さんの凄さが理解できないみたいでさ。認められなかったんだけどね」
「それと俺に何か関係が?」
「まぁまぁ話は最後まで聞いてくれたまえ」
「分かりました」
「でもね。全てが認められなかった訳じゃないんだよ。技術の一部は盗まれたりしてさ。アイツ等の私腹を肥やす結果になった」
それは知っている。ISは最初認められなかった。その事が束さんを傷つけた事も……。
束さんは俺が黙ってるのを見て話を続ける。
「それからかな? 束さんに監視が付くようになったのは。大方、束さんの技術を盗む機会を狙ってるんだろうね。だけどね。今は監視だけだけど、その内、箒ちゃんやいっくんに近付く奴が出てくるかもしれない。だから近づいてくる奴の事を調べるようにしているんだよ」
束さんの眼光が俺を射抜く。
改めて思う、この人“天災”だ。
「最初はさ、普通の子供だと思ったんだよ? でも一応ね、ハッキングしてパソコンの中身を見せてもらったのさ。中身は問題なかったけど、検索履歴が問題でね……どこでISの事を知ったのかな?」
何も言えず黙り込む俺に、束さんはさらに追い打ちをかける。
「確かにISは発表したよ? でもね。アイツ等は束さんの技術を盗む為にその全てを無かった事にしたのさ。世間の目に触れれば盗んだ事がバレちゃうからね」
「えーと、実は父が科学者で――」
「君に親は居ないよね?」
最後まで言わせろよ。てか親居ないのバレてるし。ご都合主義能力仕事しろよ!
必死に言い訳を考えている中、さらに状況が悪化する。
「姿を隠していろ。などと言うからなんだと思ったが、なるほど、普通の子供ではないと言うことか。それで束、親が居ないとはどう言う事だ?」
後ろからの声に振り向けば、腕を組んでこちらを睨んでいる千冬さんが居た。
ブリュンヒルデが参戦しました。
あれ? もう死ぬんじゃね? 泣きたくなってきた……。
「そのままの意味だよちーちゃん。そいつに親は居ない。死んでるとかじゃなく、文字どおり居ないんだよ。戸籍もなにもない。普通なら有り得ないけど、事実だよ」
「お前が調べたのなら間違いないだろう。さて神一郎、話してくれるな?」
逃げ場はないか。
「束さん、千冬さん、少しだけ考える時間を下さい」
そう言って目を閉じ、ゆっくり深呼吸する。
元々どうやって束さんにISを貰うかはノープランだったんだ。これはある意味チャンスでもある。
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