第7話 それぞれの夏休み(綾・賢治編)
綾の自室。
「木組みの家と石畳の街?」
電話をかけてきた賢治の口から出た言葉に、
綾は首をかしげる。
「聞いたことないわね。」
『実は隠れた名所らしいんっスよ。
そんで気になって調べたら最寄りの駅から直通の電車が出てるらしくて、
だからその・・・明日、一緒に行かないっスか?』
賢治の言葉に綾はドキッとして、聞き返す。
「そ・・・それって・・・デートってこと?」
『いや!その!別に嫌ならいいっていうか!
無理強いはしないっすよ?
でも出来れば綾と2人きりで行きたいなーなんて。』
綾は少しの沈黙の後、口を開いた。
「分かった・・・行く。」
『ま・・・マジすか!?』
「うん。」
『そ・・・それじゃあ明後日の朝9時に駅前でどうっスか?』
「ええ・・・いいわよ。」
『よ・・・よかったぁ、それじゃあまた。』
「・・・うん。」
綾は電話を切るとしばらくボーッとする。
「どうしよ・・・。」
綾はつぶやくとベッドの上でゴロゴロと転がり始めた。
「デートってなに着ていけばいいの!?
髪形とか変えたほうがいいのかしら!
化粧とかした方がいいの!?
どうしよ!どうしよう!」
涙目になりながらしばらく悶えると綾は携帯を手に取る。
「そ・・・そうだ!
陽子に相談すれば!」
と、電話をかけようとした手をピタッと止める。
(ちょ・・・ちょっと待って、
陽子とはあんな事があったばかりなのに、本当にいいの?
で・・・でも他に心当たりなんてないし・・・。)
綾は少し考え込むが。
「ええい!ままよ!」
そう言って電話をかける。
少しすると、陽子が電話に出た。
『もしもし綾?どうかした?』
「えっとあの・・・陽子に相談に乗ってもらいたい事があって。」
『相談?何?』
「あの・・・今度ケンと初デートする事になったんだけど・・・どうしたらいいか分からなくって。 」
『・・・』
「ご・・・ごめん、こんなこと相談されても困るわよね。」
『ううん、相談してくれた事は嬉しいよ。
でもその・・・期待には答えられないと思う。』
「え?」
『私も初デートの日に、張り切って自分なりに着飾って待ち合わせ場所に行ったんだよ。
そしたらエレンのヤツ哀れむ目をしながら、
『陽子に女子力とか期待して無いからあんまり無理すんな。』って・・・』
「なんというか・・・さすがエレンね。」
『女子力って何!?どうやったら手に入んの!?私が綾に聞きたいよ!』
「お・・・落ち着いて陽子!」
『・・・ごめん、取り乱した。
まぁとりあえず私が言えることがあるとすれば2つ。
下手に着飾らない!自然体が一番!
それと時には大胆に!』
「そ・・・そう。」
『だいたい綾はいつも通りで充分可愛いんだから問題ないって。』
「・・・うん、ありがとう。」
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