ハーメルン
【子蜘蛛シリーズ1】play house family
No.003/廃墟のおままごと(1)
思っていたよりもずっと早く戻ってきたクロロとシロノに団員たちは少し驚いたが、早速この子供について話し合いをする事になった。
「団長、本気でこんなガキを蜘蛛に入れる気か? 確かに番号はいくつか空いてるが……というか、今さっき更にひとつ空いたが」
フランクリンが、驚きを隠せない感情を滲ませた声で言った。
「アタシは別にいいけどね。あいつ嫌いだったし」
「まあ、付き合いも浅いしな」
マチとノブナガである。
死んだ男は4番で、その前の4番を殺して入団した男だった。──が、その性格のせいかあまり他の団員たちとの折り合いは良くなく、特にマチやパクノダは、度々嫌そうな顔を見せていた。
「ワタシも4番についてはどうでもいいね。それよりその子供。本気で団員にするか? それとも能力だけ盗てポイか?」
「それは能力を詳しく知ってから決めるさ、フェイタン。シロノ、説明しろ」
「えーっとね」
癖なのだろうか、シロノは首をひねった。
「あのね、おままごとなの」
「……は?」
「おうちをたてて、そこでおままごとするの。約束やぶったら、ママが怒ってパーンて」
「……パクノダ」
幼児語を解読するのを早々に諦めたクロロに、僅かな苦笑いを浮かべて、呼ばれたパクノダが立ち上がる。
パクノダが小さな肩に手を置くと、シロノは何故かぎゅっと目を瞑った。
「目は開けてていいわよ。何も痛くないから」
「うん」
素直に目を開けるシロノに、パクノダは思わず微笑む。
今の微笑みが母性本能からくるものなのかどうかはわからないが、少なくともそれに近いものを生まれ持っていたとは、パクノダ自身もひどく意外だった。
だが、子供でも子猫でも、かわいいものは可愛い。
「……あなたの能力は?」
「えっと、」
シロノは一応質問に答えようとしたが、パクノダにその必要はなかった。
「……子供の記憶って、なんだかばらばらしてるのねえ……」
「読めないのか?」
「読めるわよ、わかりにくいだけで。ちょっと待ってちょうだい」
集中しているのか今度はパクノダの方が目を閉じ、全員がシンと黙った。そして五分後、彼女は小さく息を吐いて目を開けた。
「……複雑な能力ね。出来る事が多い代わりに、制約も多い」
「説明しろ」
パクノダによると、シロノの能力は二つあるという。
「まず一つめ。簡単に言うと、円の範囲を家と見なして、その中に入った対象に『おままごと』のルールどおりに、家族の役割を割り振る……という感じね」
「家族の役割?」
「一番権力があるのが“パパ”。今は団長ね。その下に“こども”……シロノね。兄、姉、弟、妹を設定する事も出来るみたい。あと一番下がペット」
「ペット……」
「飼ってる犬とか猫とか……この役割を振られたら、その動物の鳴き声しか出せなくなるみたい。ワンとかニャーとか」
金魚とか割り振ったらどうなるのかしらね、と言うパクノダに、全員がぞっとした。
「役を割り振られた者は、シロノが考える家族内のヒエラルキーや設定が適応され、決められた役割をこなさなければならなくなるわ。自分の役割をこなさなかった場合はペナルティ。つまり絶対攻撃権、“おしおき”が発生する、というわけね」
「……条件は?」
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