ハーメルン
【子蜘蛛シリーズ1】play house family
No.004/廃墟のおままごと(2)
「……狭いねー、四人でこのスペース」
立っているのも妙だということで、座り込んだシャルナークが言った。
ついでに両方の能力の具合を見よう、と同時に『レンガのおうち』も発動させているため、四人はシロノの“円”のスペースから出られない。
しかし、四畳半のスペースに標準より大柄な男三人は、確かに手狭だ。
「そうだな……このスペースでボルゾイはないな。やはりマルチーズにしよう」
「だから犬の種類はどうでもいいから団長!」
「あれ? フィンクス喋れんの?」
「喋れるけどペナルティよ」
シャルナークの疑問には、“家”の外から、パクノダが答えた。
「“ペット”はその動物の鳴き声しか口にしちゃいけない。だからこれで家族のうち一人が、フィンクスに対して“おしおき”の権利を持てるわ」
「ああ本当だ、自動的に“絶”になっている。……なるほど、“犬は人間の言葉など喋るな”ということか……」
クロロが、感嘆を込めて呟いた。ままごとという平和な響きとは裏腹に、人権や尊厳を一切奪い去る恐るべき能力である。
更にシロノが拙い言葉で補足しつつパクノダが解説した所によると、『犬』の役割を充てられた者は、『犬』として常識的な範囲の行動しかしてはいけないらしい。それはシロノの持つ『犬』の認識にもよるが、少なくとも筆談や高度なジェスチャーなどは不可であるようだ。
「……「ワン」しかダメなのか?「バウ」とか「キューン」とかは」
「なにそんなどうでもいいポイント気にしてんの団長」
さっきも妙に犬種にこだわっていたし、もしかしたら犬が好きなのだろうか、と数人が脱力しながら思う。
そして隅には、ビキビキと青筋を立てたマルチーズ、もといフィンクスが泣く子も息の根を止めそうな形相で立っていた。
そしてもしや今からクロロが言った鳴き声を実践させられるのか、と彼は青くなったのだが、シロノが「大丈夫だよ、犬っぽかったら」と口を出したので、フィンクスは最後まで犬になりきらずにすみ、複雑ながらも、心の底からホっとした。
クロロはそれから延々と「実際にやってみて欲しい」という表情でフィンクスを見ていたが、彼は意地でもクロロと目を合わせなかった。
団長命令、と言わなかったのは、彼のせめてもの優しさ、なのかもしれない。
「この場合、フィンクスへの攻撃権を持つのは誰でもいいのか?」
「いいと思うわ」
「……シロノ、お前が“おしおき”をすることは出来るのか? ええと……“ママ”ではなく」
「できるよ」
「フィンクス、シロノの攻撃を避けてみろ、一応」
胡座をかいて不貞腐れているフィンクスの前に、シロノがとことこと近寄る。
「“おしおき”です」
シロノが宣言すると、フィンクスの身体が目に見えて固まる。
強制的な“絶”、そして身体の硬直。
「えい」
やる気のないかけ声とともに、シロノがフィンクスの肩をペシンと叩く。
それは本当に普通の子供の戯れ程度のものだったが、フィンクスはぴくりとも動くことができなかった。そして、シロノが彼を叩いた途端、フィンクスの“絶”が解除される。
「……面白いな。……シロノは俺を攻撃できないのか?」
「今は二回できるけど、パパが悪い事してなかったら、できないよ」
「……“家”を動かせないのと、自分もルールを遵守しなければならないのはネックだが……」
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