ハーメルン
【子蜘蛛シリーズ2】Deadly dinner
No.009/面談




 ──ジリリリリリリリリリリ!

「な、何だ!?」

 試験最終日、六日目の朝。
 けたたましいベルの音に、ハンゾーは驚いて辺りを見回した。
「……これ、一次試験のマラソンの時の開始ベルの音……か?」
 六点分のプレートを集め終わっていた彼だが、シロノ対策に自分の周囲十数メートルの範囲に誰かが侵入してきたら知らせる仕掛けを張り巡らし、警戒しながら後僅かの試験時間を潰していたのだが、この音はどういうことだ、と、高い木の上で寝そべらせていた身体を起こした。
「終了の音じゃねーよな、まだ一日ある……。何だ?」
 忍びたる者、怪しいものは残らず調べておかねばなるまい。そう考えた彼は、身軽な動きで木から降りると、警戒しながら音のするほうへ向かい、そして立ち止まった。
 カラン、と、ハンゾーが仕掛けた鳴子が、目の前で音を立てたからだ。
「ふむ、やっと出てきおったか」
「……何やってんだ? アンタ」
 足に引っかかった鳴子の綱を外しながら立っていたのは、ベル音を発する奇妙なマスコットを片手に持つボドロだった。
「……それ、サトツとかいう試験官が持ってたベルだろ?」
「左様。……ではさっそくだが」
 熟練して練られたような殺気に、ハンゾーが構えた。

「参る!」
「チッ!」

 地面が震えるような重い踏み込みによる突きを、ハンゾーが舌打ちしながら避ける。
「ケッ、プレートゲットできなくて最後の悪あがきか?!」
「そんな所だ」
「冗談じゃねえ、苦労して集めたってのによ!」
「ほう」
 ドン! と音がして、ボドロが再度突きを繰り出した。ハンゾーは高く跳んでそれを避け、空中で回し蹴りを放つ。しかしボドロも間一髪でそれを避ける。そして互いに間合いを見極めようと、移動しながら睨み合う。細かい攻撃を双方繰り出しながら、ハンゾーは言った。
「ったく、終了間際にベルの音で撹乱させて、寄ってきた受験生を狩るってか」
「ああ、その通り。……しかし」
「くっ!」
 一気に間合いを詰められ、ハンゾーは思わず飛び退る。しかし、ボドロが攻撃して来ることはなかった。にやりと笑う彼はハンゾーではなく、その後ろを見ている。
「……おびき出したかったのは、君一人だ」
 じゃら、という背後の音に、ハンゾーが顔色を変える。彼のすぐ後ろでは、極限の“絶”でもって近付いてきていたシロノが、ハンゾーに武器を向けていた。

「つっかまーえたっ!」
「しまっ……!」

 振り返ったその時、ハンゾーのみぞおちに、ボドロの重い一撃が入った。



「プレートちょーだいっ」
「くっそ──! あっ、あだだだ!」

 後ろ手に縛られて座禅を組まされ、さらに刃物まみれのチェーンソ-の鎖を緩く巻き付けられたハンゾーは、身動きする度に浅く刺さる刃物に声を上げた。しかも背後にはシロノが立ち、でかい刃物を背中に突きつけている。
 ちなみにシロノの腰には、あのベルのマスコットがぶら下げられている。一目見てこれが気に入ったシロノは、実は二次試験の前にサトツから譲ってもらっていたのだ。

「ハンゾーといったな。君のターゲットはもしや197番ではないか?」
「は? 違うね。オレのターゲットは──」
「とぼけるな」
 ハンゾーの前に仁王立ちになったボドロが言う。

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