第11話 告白
「俺が惚れた壬生紗耶香を、こんなことで汚させてたまるかッ!!」
紗耶香の竹刀を叩き落とした。
竹刀の地面を転がる音が、決着を物語る。
学校内は未だ襲撃の喧騒が絶えないが、二人の間には奇妙な静寂が訪れる。
竹刀を振り下ろした状態で止まっていた桐原は、残心を解くと深く息を吐いた。
そして、壬生に何か言おうと、桐原がゆっくりと顔をあげると……。
「き、き、桐原くん!? な、な、何を言って……え? えっ!?」
壬生紗耶香は顔を真っ赤にして、声が裏返るなどあからさまに動揺していた。
あれ、と首を傾げる桐原。
それも束の間、
「……あ」
冷静になった瞬間、ついさっきまで自分が何を言っていたのかを理解して、一瞬で桐原も顔色が真っ赤に染まった。
「え、えっと、だな……その……」
何を言おうとしたのか思い出すどころか何も言っていいのかもわからず、結局は桐原も紗耶香も沈黙を選択する。
お互いに顔を背けているが、チラチラと相手に視線を向けては、視線が合うとパッと目を逸らす。
桐原が混乱する頭で何とか現状打破しなければと考えたのは、現在の学校の状況を考慮して、というわけではなく、単に気まずい空気を何とかしたかったためだ。
というか、もはや二人はブランシュの襲撃など完全に忘れ去っていた。
「み、壬生!」
「は、はい!!」
思った以上に強い口調になってしまった桐原と、返事が敬語になるぐらい緊張している紗耶香。
名前を呼んだのはいいものの、やはり何を言えばいいのかわからず、桐原と紗耶香は見つめあう格好となる。
第三者が見ればこの状況で何をしているのかと心底呆れるところであり、
「……何をしているんですか、先輩方」
「うおっ!!」
「きゃあ!!」
実際に達也たちは心底呆れていた。
「し、し、司波君!?」
「よ、よう司波兄!!」
既に思考がパンク状態の紗耶香と、取り繕ったように返事をする桐原。
そんな二人を見て、司波達也、司波深雪、千葉エリカ、西城レオンハルトの四人は奇しくも同じ思いを共感して、溜め息を吐いた。
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