第1話 結代雅季
その交友関係の中には、同世代の魔法師も幾人かいる。
もしかしたら一高に入学しているかもしれないのでそのまま学校に残り、知人を探すなり新しい縁として友人を作っても良かったのだが、生憎と今日は用事がある。
駅からキャビネットに乗り込んだ雅季は、配布されたIDカードを片手で弄びながら、改めて自身の右胸に縫い付けられた八枚花弁のエンブレムを怪訝そうに見る。
それは間違いなく魔法科高校の一科生を表す紋章。
(何で一科生なんだろうな?)
合格通知が来た段階で学校側に申請を出しておいたのだが。
(……まあいいか。そういえば、あの新入生総代――)
思考を切り替えて、ふと思い出すのは入学式。新入生の代表として壇上に上がった少女。
(ちょっと似ていたなー)
脳裏に思い浮かんだ、おそらく今日も会うことになるだろう知人と似ていたことをボンヤリと思いながら、結代雅季は『外の世界』の住まいである結代東宮大社へと帰っていく。
そして、神社の本殿外陣から、結代雅季は自らを『幻想』へと分つことだろう。
何故なら、今日も博麗神社で花見があるのだから――。
同時刻、魔法科高校の生徒会室では、生徒会副会長である服部刑部少丞範蔵が生徒会長である七草真由美に異議を申し立てていた。
ちなみに服部の名前について、学校へは「服部刑部」で届出されているので、サインが必要な時は服部刑部で問題は無い。
まあ、どうでもいいことである。
「会長、どうして二科に遠慮なんかを」
「仕方ないでしょ、ノーアポだったんだから。それとはんぞーくん、生徒会役員としてそれは問題発言よ」
敬愛している先輩にそう言われてしまえば、服部としては何も言えない。
結果、彼は「失礼します」と一礼して引き下がった。
尤も、その顔は納得など到底していない顔であった。
本来なら今ごろは新入生総代である司波深雪に生徒会への勧誘を行っているはずであった。過去形なのは、それが実現しなかったためである。
服部からすれば、彼女自身に外せない用事があるのなら仕方がない、真由美が言ったとおり事前にアポイントを取っていなかったこちらが悪いのだから。
だが「二科生である兄が妹と一緒に帰りたいから」という理由ならば別だ。二科生は補欠らしく、正規な生徒に遠慮すべきだ。
更に服部の個人的な感情として、それが生徒会長たる七草真由美の頼みなら尚更だろうと強く思っている。
ちなみに本当は「一科生である妹が兄と一緒に帰りたいから」の方が正しいのだが、服部の主観では逆に見えたのでそれが誤解を生んでいた。
(一科生だから、二科生だから、なんていう選民思想は何とか拭い去りたいけど、染み付いた意識は中々拭えないわね)
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