第7話 昼休みの談笑
四月も中旬になると魔法科高校の授業も本格的に始まっていた。
それは当然ながら一年A組も例外ではなく、今回の授業では魔法式を無意識領域内にある魔法演算領域で構築するプロセス、通称コンパイルの高速化の練習を行っていた。
「に、二二七ミリ秒……!?」
周囲の騒然としたざわめきを他所に、司波深雪は涼しげな顔で授業用のCADから手を離す。
「す、すごい……!」
「流石に勝てない……」
光井ほのか、北山雫の二人も驚嘆を隠せなかった。
五○○ミリ秒以内が一人前の魔法師と目安されている中、その更に半分以下の記録を打ち立てた深雪に賞賛の視線が注がれる。
森崎駿も深雪に賞賛の視線を、だがそれ以上に熱い視線を送っていた。
「ああ、流石だ、司波さん……!」
魔法師と言えど一人の男子、可憐な美少女に鼻の下を伸ばすのは当然(?)だ。
その森崎を隣で口元を緩めながら見ているのは結代雅季。
縁結びの神職である彼は、男女間の恋愛を冷やかしたりはしない。寧ろ歓迎し、応援する立場にいる。
たとえ相手が誰であろうと、結代の名を継ぐ雅季は人間関係で誰かを揶揄することはない。
「ほら、次は駿だぞ」
深雪に見惚れていた駿に声をかけると、駿は我に返って雅季へと振り返る。
「わかってるよ」
だらしなかった表情が一変、森崎の表情が引き締まる。
森崎はCADに手を当てると、精神を集中させる。
早撃ちを得意とする森崎にとっては無様な成績は残せない。
CADから起動式を読み取り、加重系基礎単一魔法を魔法演算領域で構築し、展開する。
魔法によって加重のかかった重力計に数字が表示される。
肝心のタイムは、
「三九九ミリ秒!」
合格ラインの一○○○ミリ秒どころか一人前のレベルである五○○ミリ秒を一○○ミリ秒も上回る好タイムだ。
「よし!」
初めて四○○ミリ秒を切り自己ベストを更新したことに、森崎はCADから手を離してガッツポーズを取る。
深雪ほどではないが、森崎にもそこそこの賞賛の視線が向けられる。
「ほら雅季。次はお前だぞ」
「あいよー」
軽い返事をしてCADの前に立つ雅季。
その後ろ姿を森崎が無表情に見つめる中、
「さ、三○八ミリ秒!」
森崎を凌駕するタイムを叩き出した。
再び周囲がざわめく中、雅季の記録を見た森崎は小さく肩を落としただけで、
「実技の課題は終わったから、あとは自主トレの時間帯だな」
何事も無かったかのようにペアである雅季にそう話しかけた。
昼休みになり、雅季は友人たちと食堂で昼食を食べた後、彼らと別れて購買に来ていた。
授業の実技などでは森崎とペアを組むことが多い雅季だが、こういった休み時間では別れて行動することの方が多い。
というより、四六時中一緒にいるとなると森崎がきっとストレスで倒れるだろう。
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