NARUTO 第十六話
だからアカネは分かりやすくキバに修行の結果を見せて上げることにした。
「いいですか? これが今のあなたの通牙です」
そう言ってアカネは全身を高速回転させながら敵に体当たりするという荒業、通牙を使用してみせた。
犬塚一族は一族に代々伝わる擬獣忍法という獣そのものに成りきる術にて獣の俊敏性を手に入れ、全身を高速回転させる事で初めて通牙を放つ事が出来る。その通牙をアカネは擬獣忍法無しで放ったのだ。しかもその威力はキバのそれを遥かに凌駕していた。
「……す、すげぇ」
これがアカネの修行による成果だとすると、キバは興奮するしかなかった。
しかもたった一人でこれだ。相棒の忍犬である赤丸と共に放ったならばどれだけの威力になるか。
「そしてこれが私の修行を成し遂げた時の通牙です」
「え?」
キバが驚く間もなく、アカネは再び通牙を放った。
それは最初の通牙と違い、全身からチャクラを放出して纏う事でその威力を格段に上昇させていた。
威力が増した通牙は全てを切り裂き薙ぎ払い突き進んでいく。その破壊の嵐はキバの想像を遥かに超えていた。触れれば相手が何であろうとも確実に倒せるだろうと確信させる程のものだ。
「……」
もはやキバには言葉もなかった。茫然自失となってこの破壊の傷痕を眺めており、そして少しずつ現実感が戻ってくると徐々に興奮が湧き上がっていく。
「とまあ、このように通牙でさえこの威力になります。これを極めれば通牙の発展系である牙通牙やそれ以上の術も効力を増す事でしょう」
「すげぇ! すげぇよ! 赤丸! 絶対にこの技を覚えようぜ!」
「オン!」
最初の頃とのその気迫の差にアカネは苦笑しつつ、どうやら修行に対する意欲が湧いてきた事に安堵する。
ちなみにアカネとしては放出した肉体と同時にチャクラを回転させる事で更なる威力向上をと思っていたのだが、流石にそれは取りやめた。
それは即ち日向の秘奥と言われている回天の上位、廻天と同じ理屈の奥義になるからだ。流石にそれを他家に教えては日向の沽券に関わるだろう。
もっとも、当主であるヒアシをして十年の年月を掛けてようやく体得した秘奥中の秘奥を、まだ若いキバが一年や二年で体得出来るわけはないのだが。
「では、私の修行に文句はありませんね?」
「ああ! 文句なんてあるもんか! 早く修行を付けてくれ! どうすればいいんだ!? 何でもするぜ!」
気軽に何でもするなどと言ってはいけない。後にキバが自身の子どもにしかと教えた言葉である。
ところ変わって、アカネ(影分身)は第八班の最後の一人である油女シノと対面していた。
「……」
「……」
互いに無言のままに時間が過ぎていく。
シノもキバと同じく担当上忍に言われるがままにここへとやって来た。だが、シノにはキバと違う点があった。
それはアカネの修行を楽しみにしているという事だ。そう、シノはアカネが強く、そして師として有能である事を知っているのだ。
「私があなたの師となる日向アカネですが……私で問題はないのですか?」
「ああ……何故なら、お前の評判はヒナタから良く聞いているからだ」
そう、ヒナタは事有る毎にアカネの自慢をしているのだ。
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