NARUTO 第二十九話
兄が死んで呆けているサスケに向けて、デイダラは新たな起爆粘土を放つ。呆けている。少なくともデイダラはそう思っていたし、この一撃で終わりだとも思っていた。
サスケが先の奇襲で生き延びたのはイタチの助けがあったからだ。それが無くなった今、サスケに起爆粘土を防ぐ術はないだろう。まともに命中すれば必ず死ぬ。それは間違いではないだろうし、そしてサスケがデイダラの起爆粘土を避ける事はなかった。
「喝っ!!」
言葉と共に爆音が響き渡る。デイダラ曰く芸術作品の完成だ。それと同時に、この場に新たな存在がやって来た。
「サスケェェ!!」
仙人モードの感知力でサスケに迫る危機を察知したナルトは全速力でここまで駆けつけた。だがナルトがサソリと対峙していた位置から木ノ葉の外れまでは遠く、僅かに間に合わなかったようだ。
「おいおい。最終目標がわざわざ目の前まで来てくれるとはな。邪魔者も一気に始末出来たし、オイラはついてるな。うん」
「サスケ……! イタチ兄ちゃんまで……! てめぇよくも!!」
サスケと長い付き合いであるナルトは当然イタチとも知り合いであった。サスケによる兄の自慢を聞いた事があるナルトからしてもイタチは良い兄であり、ナルトに対しても優しく接してくれた存在だった。
弟の友達になってくれてありがとう。イタチにそう言われた事をナルトは思い出す。自分にも兄がいれば。イタチを見てそう思った事すらあった。そんなイタチが物言わず倒れている。そして今またサスケまでも。
これで怒りを顕わにしないナルトではない。目の前でヘラヘラと笑っている敵を全力で殴りつけてやろうとして――
「ナルト……下がってろ」
『!?』
サスケの言葉で、その行動を停止した。
これに驚愕したのはナルトだけでなくデイダラもだ。あの爆発でどうして生きている? どうやって防いだ?
疑問は募るが、その答えはすぐに理解できた。爆発による煙が晴れたそこにあったのは……写輪眼とは異なる紋様を怒りと共に浮かべた瞳をデイダラに向け、その身を須佐能乎のチャクラで覆っているサスケの姿だった。
「さ、サスケ!」
サスケの無事を喜ぶナルトだが、同時に彼が抱く怒気に気付き無意識の内に唾を飲む。そしてサスケの怒りの深さに納得する。
当然だろう。ナルトですらイタチの死にここまで怒ったのだ。仲の良い兄弟であり尊敬する兄を失ったサスケの怒りはどれ程の物か。
「こいつはオレがやる……邪魔をするな……」
「……」
そんなボロボロの体で何を、等とはナルトには言えなかった。自分がサスケの立場だったらどうしていただろうか。きっとサスケと同じ事をしただろうという自覚がナルトにはあった。
師である自来也が死んだと、殺されたと聞いた時、今のサスケと同じ気持ちを仇であるペインに対して抱いたのだから。
「お前は兄さんを……兄さんを守ってやってくれ。もうこれ以上、傷つかないように……」
「……分かった」
死んだ人間を守ってほしい。それがどれだけ感傷的で、どれだけ戦場で無意味な行動かは二人とも理解している。
だが、それでもそうしてほしいとサスケは願い、ナルトはそれに応えた。二人の立場が違っていれば同じ事をナルトは願い、そしてサスケは応えていただろう。
「……はっ、ははは! 死体を守ってほしい? どれだけ強くてもやっぱガ……キ……」
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