NARUTO 第三十話
イタチを殺した暁への復讐。それを無理矢理にでも抑えナルトに全てを託す。
その判断が正しかったのか、今のサスケには分からない。例え死してでも憎き仇に立ち向かうのが正しかったのではないか。だが、それは自分を守ってくれた兄の想いを無にする行為ではないか。
理性と感情。理想と現実の狭間にサスケは揺れ動く。これで良かったのか。それを物言わぬ兄に問うた時、サスケに声を掛ける者が現れた。
「良く耐えましたね、サスケ」
「お前は……アカネ……そうか、影分身か……」
突如として現れ声を掛けてきたアカネを一目見て、それが影分身であるとサスケは見抜いた。
サスケの写輪眼の瞳力は影分身を見抜く程に高まっているのだ。洞察眼に優れた白眼の使い手でも影分身を見抜ける者は殆どいない。それだけサスケの力量が上がっているという事だろう。
「復讐を押し止め、イタチの想いを汲んだあなたをもっと褒めたい所ですが、一刻を争うのでそれは後にします」
話しながらもアカネは素早く行動する。イタチの元に駆け寄り白眼にてその全身を確認する。
心肺停止状態。全身に無数の擦過傷に裂傷、更には軽度の火傷もあり。骨は無数に折れているがそれよりも問題なのは折れた肋骨が幾つかの内臓を傷つけている事。心肺停止から約二分。
瞬時にイタチの容態を把握したアカネは即座に治療に移る。これならまだ間に合うと判断したのだ。
「……まさか、助かるのか? 兄さんは、助かるのか……!?」
施術を開始したアカネに向かってサスケは叫ぶ。そこにあるのは希望と絶望。助かる可能性を見たのだ。助かるかも知れないと感じ取ったのだ。
今のアカネの行動から、もしかしたら兄は蘇生するのではないかと希望を抱いたのだ。これでもし無理だと言われたら、きっとサスケは立ち直れないだろう。
だが、アカネの口から出た言葉は、サスケを安心させるものだった。
「これくらいならば問題ありません! ですが、手元が狂う可能性もあるので今は集中させてください」
「あ、ああ! ああ!」
アカネの言葉を聞いたサスケは涙声で返事を返す。そしてその後は何も言わずアカネを見守っていた。
アカネはまず臓器に刺さっていた骨を全て取り除き、そして骨を元の位置に戻す。その後イタチの止まっていた心臓に衝撃を与えて再び動かした。
心臓が動いた瞬間にイタチの体は一瞬痙攣し、その口から僅かに血が溢れ出す。だがそれを気にせずにアカネは再生忍術をイタチの体に施していく。
強力なアカネの再生忍術によりイタチの肉体は瞬く間に癒えていく。アカネがイタチの蘇生を行って僅か数十秒。それだけの時間でイタチは傷一つない元の体へと戻っていた。
「ふぅ、これで良し。さて、サスケの傷も治しておきましょうか」
そう事も無げに言うアカネにサスケは目を丸くしていた。
「……え? 兄さんは?」
「え? もう終わりましたけど? 蘇生は終わって傷は全て再生しました。今はまだ気絶しているだけです」
アカネの言葉を聞き終わる前にサスケはイタチに近付いていく。そして恐る恐るその体に触れた。
暖かい。それを感じた瞬間に次にサスケはイタチの口元に手を当て、呼吸がある事を確認する。最後に胸元に耳を当てて心臓の音を確認する。
「……生きてる。兄さん……兄さん……!」
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