ハーメルン
どうしてこうなった? 異伝編
NARUTO 第五話

 日向宗家の屋敷の中にある大きな道場にて、息を切らして床に倒れこむ者がいる。
 厳しい稽古を積んでいる最中なのだろう。床には汗と思われる水滴があちこちに散らばり、その中には赤い水滴も存在していた。
 倒れ込んでいる者――日向ヒアシ――は不規則な呼吸を出来るだけ素早く整え、立ち上がって目の前の相手と対峙する。

「はぁっ! はぁっ! ぐぅ、も、もう一本、お願いします!」
「ええ、何度でもお受けします」

 ヒアシと対峙しているのは四歳の誕生日を迎えたばかりの少女、日向アカネである。
 大人と子ども。見た目でも、そして実際の年齢でもそれくらいの差がある二人が道場で対峙し合い、そして大人であるヒアシが息を切らせ倒れる。これを何も知らない者が見れば確実に自身の眼を疑うだろう。

 ヒアシの実力は低くない。というよりも、木ノ葉の里でヒアシに勝る実力者は数える程しかいない。
 日向の当主には相応の実力も求められるのだ。ただ宗家の嫡子に生まれただけで成れるほど安い立場ではない。
 ヒアシは日向の長い歴史の中での歴代の当主と比べても、上から数えた方が早い実力者と言えた。

 だが、それでもアカネを相手にすると力不足な感が否めなかった。だがこれに関してもヒアシが悪い訳ではない。
 日向流柔拳を学んで数十年、転生を繰り返して多くの武術を学ぶ事千年。そんな規格外を相手に勝てという方が可笑しいのだ。

 ヒアシの攻撃はアカネに掠る事もなく、逆にアカネの攻撃をヒアシは防ぎ切る事は出来ない。
 柔拳の技術では確かにアカネが(まさ)っているが、ここまで一方的になるほどの差はない。ならば何故こうもヒアシはアカネに翻弄されているというのか。
 その答えが、アカネを最強足らしめているアカネ最大の武器の一つ、読みである。

 アカネ程戦闘経験を持つ人間はまずいないだろう。幾千幾万を超える闘争を乗り越えたアカネの読みの深さはいつしか未来予知に匹敵する程に至ったのだ。
 相手の動きを、その呼吸や表情、チャクラの流れ、感情の変化、筋肉の動き、足捌きや体裁き、多くの材料から先読みして対応する事が出来るのだ。
 アカネに勝つにはアカネ以上の技術か、先読みしても避ける事の出来ない規模の攻撃か、先読みすら覆す程の動きを要求されるのだ。そしてそのどれもをヒアシは有していなかった。

 ヒアシが幾度となく道場の床に転がされ、とうとう立ち上がる事が出来なくなった時点で本日の修行は終了した。

「お疲れ様です。今日はこれくらいにしましょう」
「……」

 ありがとうございました。そう言葉にする事も出来ないくらいにヒアシは疲労しているようだ。
 仕方あるまい。この組手の前にもチャクラコントロールやその技術を高める修行をぶっ倒れるまでしていたのだ。
 回復してすぐにこれではスタミナも尽きえよう。

 だが日向当主がこの有様では他の者に示しがつかないという物だ。不意な来訪があった場合にだらしない姿を見せては日向の沽券に障るだろう。
 なのでヒヨリは自分のチャクラをヒアシへと分け与える。これで多少はマシになるだろう。

「……ふ、不甲斐ない姿を晒し、申し訳ありませぬ……」
「気にしないでください。ヒアシには世話になっていますしね」

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