17話
ホグワーツはにわかに慌ただしくなった。ついに行方不明者が出たのである。
「誰か、ウエノの行方について心当たりのある者は、至急、私の所へ申し出てください」
オーシャンの行方が分からなくなってから次の日の朝、マクゴナガル先生が朝食の席で言った。アンジェリーナがオーシャンの身を心配して泣いている。
ハリーとロンは顔を見合わせた。二人が知るオーシャンの消息は、「嘆きのマートルのトイレ」へ行くと言っていた時が最後だ。今思えば、オーシャンがいなくなって丸一日経った時点で、先生に相談するべきであった。二人が額を付き合わせて話していると、そこにジニーが現れた。何やら思い詰めた顔をしている。
「やあ、ジニー。どうかした?」
そうハリーが聞くと、彼女は一瞬ビクッと肩を震わせたが、「ハリー、私…言わなきゃいけないことがあるの」と口を開いた。
しかしそこにパーシーがクタクタの様子で現れて、ジニーは結局話し出す事なくその場を後にしてしまった。
ロンが声を荒げた。
「パース、邪魔するなよ!ジニーが話があるって言ってたのに!秘密の部屋と関係がある話だったらどうするんだ!?」
「あー…いや、ジニーの話なら、大丈夫だ。秘密の部屋とは関係ないよ」
パーシーがいやにきっぱりと言い切るので、ロンは顔をしかめた。「何でそんなこと分かるんだよ」
パーシーは僅かにギクリとした。「まあ…その、うん」とかなんとかモゴモゴ言って、食事に集中しているふりをして会話を終わらせてしまった。
思い切り不審なその様子に、ハリーもロンも肩をすくめていた。
ジニー・ウィーズリーが廊下を音も無く急いでいた。真っ直ぐに向かうのは、「嘆きのマートル」のトイレだった。
やや乱暴にドアを開ける。マートルが「誰!?何しに来たの!?」と声を上げたが、ジニーは彼女に目もくれない。
秘密の部屋に通じる通路の入り口が開いていた。ジニーは冷ややかな目でその暗闇を見下ろすと、迷う事無くその穴へ身を躍らせた。
暗い通路を歩くと、やがて蛇が彫ってある重厚な扉の前に来た。ジニーの桜色の唇からシューシューと言葉が発せられる。「開け」
合言葉を聞いた扉が、独りでに鍵を開けてジニーを中へ招き入れた。が、そこには思った通りの先客がいた。
出迎えたオーシャン・ウェーンの表情が、ジニーの姿を見て曇ったものになった。
「何故、貴女が…?」
そんなオーシャンの言葉に、ジニーはニヤリと冷ややかな笑顔を返す。オーシャンが見た事の無い、邪悪な微笑みだった。
「これは驚いた。まさかここまで入ってくるとは…。一体どうやったんだ?」
ジニーの口を借りて、知らない何者かが喋っている。それに気づくと、オーシャンはその口調に僅かに残していた優しさを捨てた。射る様な声で、知らない何者かに答える。
「生憎と、蛇語を操れるのは貴方だけでは無いのよ。貴方は誰?ジニーではないわね。彼女から離れなさい」
オーシャンが睨み付けると、ジニーに憑いていたものは銀色の幽体の様になって、ジニーの体から離れた。ジニーが力無くその場に崩れ落ちる。その手から、リドルの日記がこぼれて落ちた。
オーシャンは彼女に素早く駆け寄り、脈と呼吸を診た。浅いが、息は僅かにしている。
「その子はまだ生きているよ。辛うじてだが」
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