ハーメルン
実況パワフルプロ野球 鋳車和観編
進化の道程

「元ロッテのアンダースローの選手の動画を見てな。これだ、と思った」
「それが、スローカーブ?」
「そう。―――カーブは基本、オーバーハンドで投げる場合、リリースの瞬間から少し浮いて、落ちる軌道を描いて変化する。基本的にカーブは打ち気を逸らす、もしくは緩急をつける為に行使されるボールだ」
「そうだな」
「だが―――アンダーは、基本が浮き上がる軌道だ。オーバーハンドのカーブとはそこが違う。緩急をつける目的は勿論果たせるが―――それより、シンカーと同じく、途中の軌道まで高めの直球かどうか判別しづらい点が重要だ」
「ああ、成程」
「ただ、その分ただ抜けていく軌道を描くせいで、あまり変化はしないがな。カーブというよりは、高めの直球と緩急をつけるチェンジアップに近いかもしれない」
「それは―――あの、帝王の一年生に触発されて?」
問いかけに、一つ頷く。
「直球とシンカーだけじゃ、アイツに通用しない」
ただそれだけだ、と鋳車は言った。



ウィークリーマガジンX号~球児特集第五回、瀬倉弓也~

海東学院高校一年サウスポーの若きエースが誕生した。
彼は二日前の北雪高校との非公式試合において、鮮烈なデビューを果たした。
左サイドから放たれる直球は、最速143を記録し、そのスクリューは対戦相手曰く「伸び上がって曲がって来る」とも評される程の切れ味を誇る。左の変則型ピッチャーとしてスカウトされた彼は、現在凄まじい速度で成長していっている
―――中学時代での最速は130前半でした。ここまで球速が伸びた秘訣は。
「身体が出来上がってきたというのもありますし、投げ方を少し変えた。それがうまい事合致しているんだと思う」
―――投げ方の部分で言うと、対戦相手が「腕が伸びてくるような錯覚」を覚えたとのコメントが入っています。どのように変えたのでしょう。
「肘と、腰の回旋の部分ですね。外回りに腕を振るんじゃなく、出来るだけ内旋させて腕を巻きつける様な感覚で投げるようにしています」
―――左サイドともあって、左打者に対して猛威を振るっているのはこれまでと変わりがないようですが、右打者に対しての指標が劇的に改善されています。
「球速が伸びた事で、右打者のインサイドに投げ込めるようになった。スクリュー以外を生かすも殺すも、直球ですから」
―――夏場でも、そう言えば長袖のユニフォームを使うのですね。去年はアンダーだけでしたが
「腕全体の使い方を変えたので、それを隠す意図でそうしています」
―――抱負をお願いします。
「海東学院をこの左手で、甲子園まで連れていきます」

以上、インタビューでした。

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