ハーメルン
侍女のアリィは死にたくない
第15話 研究されて死にたくない

夜の森を歩く人影がある。
それも一つ二つではない、大勢の影。
先頭を歩いているのは4人。

「……ビンゴ。ナイトレイドのアジトみーっけ」

その中心人物こそDr.スタイリッシュ。
彼とともに歩いていた3人はそれぞれ目・耳・鼻と呼ばれており、呼び名のとおりスタイリッシュの手術によってそれぞれの器官が強化されている。

彼らは逃げ出したタツミを追ってここまで来たのだ。
わずかに残された匂いなどの手がかりをたどって。

手駒の一人であるトローマが先行してナイトレイドのアジトに急襲をかけにいった。
その成功を耳から聞いたスタイリッシュは大きく頷くと号令をかける。
彼が連れてきたのは3人だけではない。ナイトレイドを捕らえて実験材料にするため、多数の強化兵たちを連れてきていたのだ。

「チーム・スタイリッシュ! 熱く激しく攻撃開始よッ!!」

そして――






「スタイリッシュと連絡がつかない」

会議室に集められたイェーガーズ。その中にスタイリッシュの姿はなかった。
エスデスの発言を受け、ランが報告を始める。

「私やアリィさんで彼の研究室を調べました。強化兵が全員姿を消していましたが、研究資料や研究道具などはすべて残されており、何かを持ち去った形跡はありませんでした」
「彼の部屋に残された資料などを現在調べている途中ですがめぼしい情報は出てきていません。しかし、研究第一であった彼が資料を放置して逃亡したということは考えにくいです。強化兵がいなくなっていることを踏まえると、おそらく彼はどこかへ襲撃に向かい……」
「返り討ちにあった、と見るべきだろうな」

アリィの言葉をエスデスが引き継ぐ。
スタイリッシュの研究意識の高さは全員が知るところである。そんな彼が独自戦力を持っているということもあり、今回単独行動をとってしまったのだろう。
そしてわざわざイェーガーズに黙って襲撃に向かった先、彼や彼の強化兵を返り討ちにできる戦力となると自然と絞られてくる。

「おそらくナイトレイドにやられた……といったところか」
「ナイトレイド……またしてもっ……!!」

セリューが鬼のような形相になり、歯を食いしばって手を握る。
彼女は父を賊によって殺され、尊敬していた上司・オーガをナイトレイドに殺されていた。
そして今回、義手や武器を提供してくれた恩人をナイトレイドに奪われたのである。
正義を志す彼女にとって、大事な人が悪に奪われるというのは何よりもつらかった。

「今後、スタイリッシュは死亡したものとして動く。奴の帝具もおそらく革命軍に渡ってしまっただろう……。全員、気を引き締めろ。では解散」

イェーガーズの会議室から出たアリィ。今日は侍女の仕事はなく屋敷での仕事が主である。
そのため会議の後はそのまま宮殿からサンディス邸へと戻る。
今回は久々に馬車を使った。調査のためスタイリッシュの部屋から持ち出した資料の一部を持ち帰る必要があったからだ。さすがに手で持って帰るのは非力なアリィにはつらい。

屋敷に戻ると、アリィは一人書斎に入る。
いまや完全にアリィ専用の仕事部屋となったその部屋に、ランプの明かりがゆらゆらと揺れる。
書類を置いてもらうと、使用人たちを下がらせ一人部屋に残る。

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