ハーメルン
侍女のアリィは死にたくない
第17話 新型危険種に襲われて死にたくない

「かしこまりました」

一部皮肉を混ぜたのだが、アリィはまったく気にした様子も見せずに一礼すると部屋を出て行った。
彼女が出て行った扉を見て、エスデスはため息をつく。

「大臣。アリィをどうやったら戦場に引っ張り出せると思う?」
「まず無理でしょうなぁ。彼女の帝具の適合条件はご存知でしょう?」
「予測だといっていたが、あいつを見ていると間違っているとは思えんな。兵士には使えない帝具とは。そのくせ、効果だけは強力ときた」

まったくもってつまらんものだとエスデスは思う。
ナイトレイドすら撃退できる帝具だ。本当に戦場に持ち込めないのが惜しい。

「いや、待てよ?」

しかしエスデスはあることを思いつく。
確かに戦場に無理やり連れ出すのは無理だ。
だが、あるいは、これなら。

(とはいえこちらからすぐ実行できるものでもないな。機会をうかがうしかないか……)

「エスデス将軍。アリィ殿の機嫌を損ねるようなことをしないでくださいよ? 彼女はあなたを殺しうる極めて希少な存在です。あなたにはこれからも帝国と私をささえてもらわなくてはいかんのですからな」
「案ずるな。ただ考えているだけではすぐやつの能力が私を殺すわけではないのだろう? そもそも私はあいつを殺そうと思っているわけでもないさ」

だが、ただ黙っておくほどエスデスという人間はおとなしくない。
自分は常に屈服させる側だ。いつまでも黙っていると思うなよ。
彼女のことを思い浮かべながら、エスデスは楽しそうに笑っていた。





一方アリィはというと、イェーガーズのメンバーに召集連絡をした後、食堂の掃除や机の上の用意をしていた。まもなく皇帝の食事の時間なのだ。
テーブルクロスを整え、机の上の花などを並べる。
食器はこのあと運ばれてくるものを現在一緒に用意している他の侍女に並べてもらい、自分は厨房に行って料理を運ぶ。
これからの仕事を頭で考えながら彼女は準備を進めていた。

「あの、アリィさん」
「どうかしましたか?」
「最近、新型危険種が出没していると聞きましたが……帝都は大丈夫でしょうか?」

新型危険種の噂はすでにほかの侍女にも伝わっているようだ。
もっとも、被害が拡張している現在なら仕方のないことかな、と彼女は思った。

「えぇ、きっと大丈夫ですよ。エスデス将軍も含め、イェーガーズも動いていますから」

今回は特に秘密任務というわけでもないので、イェーガーズが動いていることを明かす。
情報を出す、出さない。このことにもアリィはわりと慎重である。
それを聞き、ほっとした様子を見せる侍女たちを見ながらアリィは考える。

(しかし、新型危険種ですか。実物を見る必要があるかもしれませんね)

幸い、これから皇帝の食事。そのとききっとオネストも来るだろう。
ならばそのとき、あるいは食事の後にでも頼めばいい。オネストも新型危険種についての情報を回してくれるだろう。





食事が始まる。
ほかの侍女はいない。皇帝に給仕ができるのは皇帝付き侍女となっているアリィにのみ許されているのが現在の状態だ。もちろん、彼女が宮殿にいないときはまた別だが。
さらに大臣に近づきたくないという侍女は多いため、自然と人数は減る。

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